第2回 電撃攻撃なんて怖くない

 
 

 どこが「ゼロゼロ用語」なのかよくわからないが、今回は電気の話である。

 世の中に存在している物質は、すべて原子から出来ている。原子は、電気的にプラスの陽子と、マイナスの電子、文字通り中性の中性子と呼ばれる三種類の素粒子から構成されている。
 通常、原子は陽子のプラスと電子のマイナスがつり合っていて、電気的に中性だ。しかし、電子は移り気なので、時々他の原子にくっついてどこかへいってしまう。電子に逃げられた原子は、電気的につり合っていた状態から逃げた電子のマイナス分が減るので、プラスになる。逆に、余分な電子にくっつかれた原子は、電気的にマイナスになる。これを帯電という。また、帯電した状態の電気を、静電気という。(註1)

 さて、二つの物体があって、その二つに帯電している静電気の量に差(電位差)があると、この差をなくそうとする力が働く。この力の大きさを電圧という。空気は、基本的に電気を流さない(不導体)のだが、十分に電圧が高ければ、移り気な電子も「もうダメ、我慢できない」と言って(註2)、二つの物体間で電流が流れる。(註3)
 これを放電という。
 冬場にセーターがパチパチしたり、ドアノブに触れたときにパチッとくるのも、雷が落ちるのも(註4)、0010の電撃も放電である(註5)

 空気放電に必要な電圧(絶縁破壊電圧)は、間隔 1cm につき3万ボルトである。(註6)
 残念ながら間隔数十 cm 以上の放電(ロングギャップ放電)ではこの公式が成り立たないため、大雑把な数字(註7)しか言えないのだが、間隔 10m として、0010の電撃攻撃の電圧は、300万ボルトである。(註8)
 300万ボルトがどのぐらい凄いかというと、それはもう説明できないぐらい凄いので、説明は省略する。強いてあげるなら、乾電池200万個を直列でつないだのと同じぐらい(註9)、君の瞳の300倍の電圧である。

 ちなみに、放電前に0010の体が光っているが、これはグロー放電(註10)と呼ばれる現象である。嵐の夜などに船のマストがぼーっと輝いて船乗りを畏れさせた「セントエルモの火」も同じグロー放電だ。
 
 問題は、0010の電撃攻撃にどう立ち向かうか、である。(註11)
 基本は雷とそう変わらないはずだから、実は簡単に対応策を考えることができる。もちろん、身につけた金属をはずして、体を低くするのが基本だが、サイボーグは金属を内蔵しているのでこれは使えない。しかし、決戦予定地に適当な間隔で避雷針を設置しておけばいいはずだ。または、動きが制限されるが、メンバー全員が避雷針を背負って戦うという手もある。(註12)
 また、0010が二人で攻撃を仕掛けてきた場合、もっと簡単に対応できる。電気は、0010プラスと0010マイナスの間を、ほぼ直線上に流れるはずだから、二人の間に立たないように素早くよけるだけでよい。(図)
 もっとも、この「よける」という手段を封じるために、二人の0010は回転しながら攻撃しているのだが。
 
 


  図 プラスとマイナスの間に立たなければ比較的安全(のはず)



 
 

 
(註1)静電気は、主に摩擦によって起こるが、このとき生じたプラスとマイナスの電気は引き付けあう。
 下敷きと髪の毛をこすりあわせたり、ストローを布でこすって水道の水を曲げたりしたことのある人は多いと思う。(ちなみに、静電気をためやすい体質の人は、ストローの代わりに自分の指で水を曲げることができる。超能力とは関係ないので心配はいらない)

(註2)本当は言わない。

(註3)マイナスに帯電している物体(マイナス極)から、プラスに帯電している物体(プラス極)に、電子(これはマイナス)が移動することを、プラス極からマイナス極に向かって電流が流れる、と表現する。紛らわしい話だが、こうしておかないと、フレミングの左手の法則で中指を反対側に90度曲げなければならなくなり、中学校の保健室がパニックになる。

(註4)落雷は、雲の中の氷の粒が摩擦によって帯電し、地面と雲の間で起こる放電現象である。もちろん地面は帯電していないが、雲の方が強烈に帯電している。ちなみに落雷時の雲と地面の間の電圧は、約一億ボルトと推定されている。雷雲と地面との距離は、およそ 3km 。

(註5)0010がどのようなシステムで電気を貯えているかは不明。摩擦、ではないと思うが。ちなみに原作では「電気ウナギのように」と書いてある。

(註6)1.5 ボルトの乾電池を二万個直列につなげば、家庭でも放電実験ができるかもしれない。

(註7)かなりいい加減な数字である。手元の参考文献には出ていなかったので、ご了承ください。

(註8)水は電気を通すので、0010の体表から電気が逃げてしまい(要するに漏電である)、高電圧に達することができない。 このため、水中あるいは雨の中では、電撃の効果は大幅に減少する。

(註9)大変な危険を伴うので、よい子は真似をしないこと。

(註10)グロー放電に対して、落雷などの放電を火花放電という。この文では、「放電」を火花放電の意味で使っている。

(註11)もちろん、008の見事な戦術を否定するつもりはない。

(註12)可能かどうかは、ギルモア博士に聞いて欲しい。
 
 

 かなりいい加減な知識に基づいて書いているので、あまり信用しないで下さい。どうしても許せない、勘違いもはなはだしいと思われる記述がある場合には、メールにて御指摘ください。ただし、あまり難しいことを言われても対応できません。
 なお、太字に深い意味はありません。
 

参考文献
速水敏幸著『謎だらけ・雷の科学』 講談社ブルーバックス
(この本は真面目な本です)
 

(2001/11/24)

 
 
 
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