炎の料理人、006こと張々湖は、口から3000度の火を吹く。
普通の人間は、5、60度辺りから「熱い」と感じ始めるような気がするから(気温30度は暑いけど熱くないので却下)、3000度は普通の「熱い」の50倍は熱いことになる。
普通の50倍の熱さがどれくらいの熱さかというと、それはもう何というか非常に物凄くとてつもない熱さだということは間違いないが、熱すぎて文章で表現することは不可能である。
なので、かわりに色々な温度を調べてみた。
太陽の表面温度が約5700度、広島型原爆の爆発1秒後の表面温度がおよそ5000度、溶岩が概ね900〜1200度。紙が燃えはじめる温度は華氏451度。
ゴミ焼却施設でゴミを燃やす温度が800度以上(それ以下だとダイオキシンが発生するらしい)、火葬場も同じぐらい。1200度以上になると骨も残らない。
「燃やせるゴミ」や人間を燃やす分には、3000度は充分以上の温度であることがわかる。(ダイオキシンも発生しない)
では、「燃やせないゴミ」はどうか。
以下に身近(?)な物質の融点(ドロドロに溶けちゃう温度)と沸点(蒸発して気体になる温度)を適当に抜き出してみた。
(以下、数字はすべて国立天文台編『理科年表』平成四年版(古い…)より)
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元素
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融点(℃)
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沸点(℃)
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| アルミニウム | 660.4 | 2486 |
| 鉄 | 1535 | 2754 |
| 金 | 1064.43 | 2710 |
| 炭素 | 3500以上 | 4918 |
| タングステン | 3387 | 5927 |
| タンタル | 2996 | 5425 |
| レニウム | 3180 | 5627 |
アルミニウムや鉄、金などは、3000℃では一瞬のうちに(かどうかはわからないが)蒸発してしまう。一方、3000度でも溶けない強者もいるようだ。
タングステンは、電球のフィラメントに使われている。たかが豆電球と侮っていた自分が恥ずかしい。(反省)
タンタルは、携帯電話などハイテク機器には欠かせない素材だ。融点はかろうじて3000度を下回っているものの、手強い相手だ。携帯電話には油断するなよ、006。
ところで、タンタルの産出量世界一の国はコンゴ(旧ザイール)で、008はこの国の出身だった気がする。
レニウムというのがあるようだが、そんなもの見たことも聞いたこともないから知らない。この世界には存在しない物質かもしれない。(よい子は信用しないでね)
単体(一種類の元素でできている物質)の中で、融点が3000℃を超えるのは、上の表にある三つだけだ。第1話で、サイボーグ達が閉じ込められた部屋の壁の正体がうっすらと浮かび上がって来る。
(化合物では、炭化タンタルというのが融点3880度沸点5500度で、現在知られている中でもっとも高温に耐えられる物質である。)
今度は、炎の温度を見てみよう。
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炎
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温度(℃) |
| ロウソク | 1400 |
| アセチレン | 2500 |
| 水素および酸素(酸水素炎) | 2800 |
| アセチレンおよび酸素 | 3800 |
注目すべきは、やはりアセチレンの炎の温度だろう。
アセチレン・ランプが2500度で、張々湖が3000度だから張々湖の勝ちってことになるんだろうが、まさか、あのお二方がこんな所で張り合っていたとは思いもよらなかった……。
それはともかく、表を見る限り、3000度の炎というのはそれほど無茶な数字では無さそうだ。006は、水素と酸素とアセチレンあたりを上手いこと混合したガスボンベを体内に備えているものと思われる。
もちろん火を吹き続ければガスは減っていくから、こまめに補充しなければ、--いや、待てよ……。
以前TVで、生ゴミを発酵(?)させて出て来たメタンガスを再利用する、とかいう研究を紹介していたのを見たことがある。
現実にそういうことが可能である以上、ブラックゴーストの科学力を持ってすれば、生ゴミ、じゃなかった、摂取した食料をあんなことやこんなこととかして、最終的に必要な混合ガスを生成する装置を作ることなど朝飯前に違いない。いや、もちろん、ガスの生成に朝飯は必要であるが。
こうして設計されたガス生成装置および保管装置(ガスボンベ)を体内に格納するためには、ブラックゴーストの技術力を持ってしても、ある程度の容積を確保しなければならない。また、ガスの生成には、大量の生ゴミ、じゃなかった、食料の摂取が必要である。
すなわち、006は、食い意地の張った、ただのデブではないのだ。006のあの体型、あの食欲は、サイボーグ戦士としての活動を維持するために、必要不可欠なものだったのだ。
それにしても、なんて説得力のある結論なんだ。(自画自賛)
なお、蛇足ではあるが、発生したガスを体内の装置によって効率的に回収保管するため、006がオナラをすることはない。