地下帝国ヨミ編

第45話 さよなら、ドルフィン



 名将ザンブロゾの猛攻を退け、テスト兵器ヒドラGのマグネトロン・ウェーブ攻撃に耐え、数々の艱難辛苦を00ナンバー・サイボーグと共に乗り越えてきた万能戦艦ドルフィン号。
 そのドルフィン号が、遂に壮絶な最期を迎える。

 と書いてはみたものの、何だかあっけない最期であった。もっとも、“共に乗り越えてきた”という印象自体希薄だったから、こんなもんかとも思う。とは言え、バン・ボグートが送り込んだ刺客は、ミサイルザメだのサイボーグマンだの、要するに雑魚である。例えるなら、下っ端戦闘員に打ち負かされる仮面ライダー状態ではないか。
 何だかんだ言っても、ほぼ1年間共に歩んできたドルフィン号を送るイベントとしては少々寂しい。
 バン・ボグートもケチケチしないで、超音波怪獣の一匹ぐらい差し向ければいいのに。せっかく超音波怪獣なんてアイテムがあるんだから(ついでに、43話以外活躍場面もない)、有効利用しないのは実に勿体ない。
 ドルフィン号も超音波怪獣と激闘の末、刺し違えるぐらいの見せ場があれば、心置きなく浮かばれ……、じゃなかった、沈んでいけただろうに。(戦闘場面限定で某増田氏をピンポイント投入とかしてみるのも一興だったかも知れない)
 。


 さて、しつこく004について。
 人間(サイボーグ含む)が十人も集まって一年間行動を共にすれば、自ずとそれぞれのポジション、立ち位置は決まってくるものだ。仕切るヤツ、参謀役を買って出るヤツ、とにかく文句をつけるヤツ、不言実行なヤツ、狸寝入りを決め込むヤツ、電波な紅一点、解説担当、お笑い担当、空腹担当、存在感のないヤツ、等々。
 スタンダードなポジションが確立していれば、ストーリー的にも安心感というか安定感も出るし、多少羽目を外しても、そのキャラクターが持っている別な側面という解釈も出来るのだが、この期に及んで004のスタンダードをどこに置きたいのかが見えなくなって困惑してしまった。
 疑り深い004の言動に対して他のメンバーは、「やれやれ、また始まったよ。言ってることは確かに間違ってないだろうけど、相変わらずきつい言い方するよなあ」と受け止めているのか、「普段は思いやりのある優しい男なのに、こんなきつい言い方をするなんて、004は一体どうしちまったんだ?」と思っているのか? そんなことを考えてたら、力の入っている(はずの)ドラマも白々しくて、本気で見るのが辛くなってきた。ていうか、正直まいった。
 どうやら私の肉体は、いつの間にか004@甘ちゃんモードに蝕まれ、004@皮肉屋モードを受け付けられない体になっていたらしい。
 こだわりすぎなのかなあ、とも思うのだけど、率直に言って、平ゼロスタッフは一年間何をやっていたのか、と思わずにはいられない。

 それはそれとして、今さらだが、(42話までの)004を心優しいリーダー(42話以前にも時々、微妙に皮肉屋モードが顔を出してたりもするが)にしてしまったことが、平ゼロ最大の失敗だったと考える。(前回分でも書いたが、恥ずかしながら私は、ヨミ編が始まるまでは、スタッフがこの004像にそれなりの勝算を持っているのではないか、という甘ったれた妄想を捨てきれなかったのだが、そんなものはこれっぽちもなかったらしい)
 原作では、――私は“原作至上主義者”のつもりはないし、ある部分ではもっと徹底的に原作を解体して再構築すべきだったとも思っているのだが、原作では、004は冷笑的で現実的な皮肉屋であり、学級委員的正論、理想論を語る009の対極に位置する。彼の存在は、学級委員的正論とは異なる視点を提供することで、ストーリーが一面的な片寄ったものになるのを防いで、お話にふくらみを持たせる。何よりも、004@皮肉屋モードは、ヘレンに露骨に疑いの目を向けたり、子供に銃を突きつけたり、他のキャラには出来ないことが出来るのである。(ちなみに、原作には異なる視点を提供する希有なキャラクターがもう一人いる。006である。「コスモ・チャイルド編」など一般庶民的立場で結構身もふたもないことを言ってるのだが、この人だけはイヤミにならない)

 平ゼロでは、009の成長を描く、という意図もあったらしいが、成功しているとは言い難い。
 もしも004が最初から皮肉屋さんだったならば、(今回のように)009も「そんなことはないッ」と自己主張する機会に恵まれて、存在感もアピールできるし、009の“成長”ももうちょっときちんと描けたのではなかろうか。(二人がぶつかるということは、同時に004の“成長”を描くことにもつながったはずだ)
 しかし、(42話までの)平成版004は、心優しきリーダーであり、これはつまり要するに平たく言うと、原作で009の占めていたポジションであり、平成版成長過程の009としては、同じような考え方の持ち主である上に、自分よりも遥かにオトナな004には反発のしようもなく、最初から自己主張の機会を封じられているに等しい。結果的に009は、それなりに活躍しているはずなのに、ヘナチョコな面ばかりが印象に残る影の薄いキャラになってしまった。

 009と対峙するポジションに、004ではなく002を置くつもりだったのかも知れないが、002には荷が重すぎる。
 個人的には、002は平ゼロで一番成功したキャラだと思うのだが、短絡思考なだけの平成版002には、経験に裏打ちされた思想を持つ原作版004の替わりは務まらないのである。何よりも、平成版002は、他人を成長させるキャラではなく、自分自身が成長するタイプのキャラなのだ。(だからこそ、平成版002は魅力がある、と思う)
 
 そんなわけで、主人公であるはずの009が目立たないのも、平板で深みのないストーリーが多いのも、みんな心優しい004が悪いのだが、その優しさで主役の座を奪った004もヨミ編で人格が激変してしまい……。

 どこをどう間違ったら、これほど統一感のないガタガタなシリーズになってしまうのか、それだけは、どう考えてもよくわからない。


(2002/11/30)




戻る