ミュータント戦士編4

第42話 明日へ…



 平ゼロで痛切に感じたのは、肝心なところで登場人物の心情に共感できないエピソードが多いなぁ、ということだった。構成の失敗やキャラの一貫性の欠如の結果とも言えるが、取って付けたような白々しいセリフが唐突に飛び出したりして、共感以前に「はぁ?」という困惑が先に立ってしまう。嘘っぽいというかギゼン的というか、薄っぺらくて迫ってくるものがない。間違ったことは言ってないような気はするのだが、この人たちは、本当にそう思ってこの言葉を言ってるのだろうか、みたいな疑惑に駆られてしまうのだ。
 その結果、キャラやストーリーの印象が希薄になり、何がやりたいのかよくわからんことになってしまう。(その結果、登場人物の心情に共感できず、その結果、キャラやストーリーの印象が希薄になり……)
 そう思うのは、単純に私の根性が曲がっているせいなのかもしれないが。

 未来に飛ばされた009の「僕たちの闘いは無駄だったのか?」という絶望のセリフも、それなりに同情はするものの、ブラックゴーストとの死闘を繰り広げていたのは咄嗟には思い出せないほど昔のことであり、ついこの前まで(数々の傍証があるにも関わらず)ブラックゴーストが滅んだと信じて遺跡探検とか心の旅とかしてた人に言われてもなあ、と根性曲がりな私は思ってしまうのである。

 さて、数十年後だか数百年後だかの未来(“平和だった時代”を知る人がいないらしいので、それほど近い未来ではないと思える)では、わずかに生き残った人類をブラックゴーストが皆殺しにしようとしているようなのだが、そもそもブラックゴーストの最終目的とは何なのか。
 一応、現時点で明らかなのは、ブラックゴースト=死の商人、兵器を開発・販売して利益を得る営利団体である(はずだ)。その事業には、世界情勢を刺激して不安を煽り、需要を喚起する、という要素も含まれるだろう。ただし、顧客(人類)がいなければ商売は成立しない。ブラックゴースト的には、人類が滅びない程度に戦争を継続してくれるのが理想的である(はずだ)。
 もちろんこれはタテマエであって、ホンネが別のところにあってもなんの不思議もない。そのホンネが“人類を滅亡させること”であるという可能性も、 個人的には釈然としないが、まあ、アリかもしれない。戦争の行き着く果ては破滅しかないわけだし。
 ただし、ブラックゴーストを支配しているのは、(後に明らかになるが)意思のある存在であって、決して暴走して歯止めのきかなくなったコンピュータ(例:スカイネット)などではない。
 要するに、ブラックゴーストのホンネが“人類滅亡”にあるならば、それは、ブラックゴーストにとって“愉しい”からであるはずだ。しかし、かろうじて生き延びた人類を圧倒的な軍事力で根絶やしにするのが、ブラックゴーストにとって“愉しい”とはとても思えないのである。
 どうせやるなら、生き延びた人類を二手にわけて棍棒でも売り付けて最後の一人まで殺し合わせた方が、よっぽど“愉しい”はずだし(もちろん“愉しい”のはブラックゴーストであって私ではない。念のため)、これこそが清く正しいブラックゴースト・スピリットというものではないだろうか。
 解釈の違いと言われればそれまでだが、人類が自滅する“手助け”はしても、直接手を下すのは違うと思うんだけどなあ。
 そもそも、ブラックゴーストが直接的に人類を滅ぼそうとするってことは、人類に自滅する“才能”が無いと認識してるってことで、それはつまり、ブラックゴースト自身が性善説の立場に立つことになっちゃいそうな気がするのだが。(もちろん性善説を信じているのはブラックゴーストであって私ではない。……あれ?)

 
 ところで、ミュータント戦士編の重要なテーマの一つとして、ガモ博士と001の“対決”を描くことがあったのではないかと推測するが(あくまでも“推測”である)、肝心の対決は、40話で「父だとは思っていない」という、001の父に対するコメントが語られただけで、ラストの「わかってるよ」で決着がついてしまったらしい。(ガモに向かってモゴモゴと口を動かす場面があるが、演出なのか、脚本家が適当なセリフを思い付かなかったのか……)
 001にとっては、テレパシーでガモの心を読めば全てわかるだろうが(だったら、研究資金と引き換えに父に捨てられた時点で「わかって」いてよさそうな気もする)、テレパスでない私には、何が「わかった」のかさっぱりわからない。
 ガモ博士が実はいい人だということが「わかった」のか、どこまでもエゴの塊のような男だということが「わかった」のか、歪んではいても彼なりの愛を持っていたということなのか(子供を虐待する親が子供を愛していることもある)、その「わかった」ことに対して、“モゴモゴ”で001が父に何を伝えようとしたのか、「今までパパのことを誤解していてごめんね」なのか、「どんなに虐待されてもボクはパパのことが大好きさ」なのか、「自分を責めるのはもうやめて。ボク、パパを許すよ」なのか(これが一番収まりがいいような気はするが、残念ながらガモは過去を悔いてるように見えない)、「死ね死ね死んでしまえ」なのか、肝心なことは、イワンは何にも言わんのであった。

(2002/11/13)


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