ミュータント戦士編


第41話 悪夢の未来



 009を失った00ナンバーは、取りあえずギルモア邸に帰還。戦いの場となった無人島に残っていても仕方ないとはいえ、冷静に考えれば、009の行方を探すにはミュータント部隊と接触するしか手が無いわけで、今こそ「こっちから仕掛ける」べき時なはずなのだが、004も動揺の余りそこまで思い至らないらしい。(ところで見張りはしなくていいのか?)
 余談だが、盛り上がりかけたストーリーの流れを断ち切ってホームポジション(コズミ邸、ギルモア邸)に回帰する傾向は、第8、28話でも見られる。ついでに、螺旋階段ループは第1、2話(敵基地潜入→敵輸送機(or ドルフィン号)強奪→脱出)でもやってるし、いろんなテーマを盛り込もうとして結局何が言いたいか分からなかったりなど、よくも悪くも、ミュータント戦士編は平成『009』における大西脚本の集大成と言える。


 さて、ギルモア邸での作戦会議。議題は、『超能力で時間を超えることができるか』。
 これまで、003の言動には結構ケチをつけてきた私だが、今回ばかりは003に賛成。理屈なんかどうでもいい。
 ていうか、正直に白状すると、ギルモア博士の解説とシンクロワープがどう結びつくのかさっぱり理解できなかった。私が言うのもなんだが、屁理屈にもなってない気がする。
 物語の成否は、作者の主観に視聴者を取りこめるかどうかにかかっているわけで、視聴者が混乱したり白けたり、あるいは素に戻って考え込んじゃうような(少なくとも私はそうだった)解説をしてしまっては、本末転倒である。
 普通に「精神エネルギーを一点に収束して時空に穴を開ける」とか言ってくれた方がまだ納得できる。というより、『サイボーグ009』の世界自体が、超能力と呼ばれる架空の(少なくとも科学的には立証されていない)力を許容している以上、「スゴイ超能力で時間を超えました。終わり」であっても十分だったはずだ。(どっちかっていうと、なぜ時間を超えられるのかよりも、希代の超能力者である001が時間移動の能力を持たないのはなぜか、を解説する方が重要だと思う)


 などと言いつつも、私は作者ではないので、“シンクロ”について野暮な考察を巡らせてみるのである。
 意識の“力”をある種の波(思考波)と考えると、“シンクロ”の意味が理解しやすい。



 上図のように、A、B、Cの三人の意識(思考波)が同調した場合、その重ねあわせによる思考エネルギーは3倍になる。“意識”が単純なグラフで表せるかどうか疑問に感じる人もいると思うが、古来より屁理屈なるものは都合の悪い要素を無視することで成立するものなので、気にしてはいけない。(当然、都合の悪い要素を読者や視聴者に気付かれないための努力も必要ではある)
 次に、例えば、ヘナチョコなCが弱気になって(あくまでも例であって、特定の人物・団体とは一切関係ありません)、A、Bとの同調が崩れた場合を想定する。



 3人の思考波の重ねあわせは、上のように乱れたものとなる。
 ミーの能力が、思考エネルギーを時間移動のエネルギーに変換するある種のコンバーターの役割を果たすとすれば、入力が乱れれば変換効率が落ち、結果的にシンクロワープが成功しないのも、容易に理解できる、ような気がする。(一番理解した気になっているのは、これを書いた本人である)
 なんとなく、前回(40話)書いたことと矛盾してるような気もするが、気にしてはいけない。


 
 さてさて、未来に飛ばされた009とリナである。
 009は、ペンダントについて「ある人の遺品だった」と発言するなど、招待状改めニコルの死とリナは全く無関係、みたいな話し方をしているのだが、009の立場であれば、
招待状改めニコルは、張々湖飯店で超能力者に殺された)+(手がかりを追ってロシアに行ったらリナを含む四人の超能力者、ミュータント部隊に出会った)×(四人はブラックゴーストの一員であり、00ナンバーを倒すために現れた)−(リナはとりあえず美人である)=(ニコルを殺したのはミュータント部隊であり、その一員であるリナも、直接手を下しているかどうかはともかく、ニコルの死に無関係とは言えない)
のように考えるのが普通であって、だから、「殺したのは君たちじゃないのかっ」ぐらいは言ってもいいはずなのだが、そうは言わないということは、すなわち、前提である上の式のどこかに間違いがあることになる。

 とりあえず式を整理すると、
(数々の疑惑)−(リナは美人)=(リナは怪しい)
となる。

 察しのいい読者の方々は、ピンときたのではないかと思う。
 そうなのだ。
 重要な要素を見落としていた。
 (リナは怪しい)は、常に正の値をとるので、この式が成立するのは、
(数々の疑惑)>(リナは美人)
の場合だけである。式を正しく記述するなら、条件によって場合分けしなければならない。
 つまり、正しく式を記述すれば、
(a)(数々の疑惑)>(リナは美人)のとき
(数々の疑惑)−(リナは美人)=(リナは怪しい)

(b)(数々の疑惑)=(リナは美人)のとき
(数々の疑惑)−(リナは美人)=0

(c)(数々の疑惑)<(リナは美人)のとき
(数々の疑惑)−(リナは美人)= −(リナは怪しい)
である。

 また、 009がその言動から、少なくともニコル殺しに関しては、
(リナは無関係)
と考えているのは明らかであり、かつ
(リナは無関係)= −(リナは怪しい)
であるから、009の言動における条件を満たすのは、(c) 式のみである。
 したがって、009にとっては、
(数々の疑惑)<(リナは美人)
であることが証明される。


 苦労して導き出した結論のわりには、周知の事実だったりしそうな気もしないではないのだが、これを一般化すれば、
(疑惑)<(美人)
であり、世界が平和になった暁には、キャッチセールスだの怪しげな宗教の勧誘だのに引っかかって、ツボとか買いまくったりしそうなのだが、009、大丈夫だろうか。


(2002/9/4)



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