第35話 風の都


 

 インカ帝国は、現在の南米ペルーを中心に十五世紀中ごろに成立。1533年、スペイン人ピサロが皇帝アタワルパを処刑(処刑する前に身代金として、牢屋いっぱいの金銀財宝をせしめた)して、インカ帝国は事実上滅亡する。
 その後、王族のマンコ・インカ(注:他意はありません)は紆余曲折を経つつ(一時はスペインの傀儡政権の皇帝になったりもする)スペイン人の手を逃れ挙兵、自ら皇帝を名乗り、“インカ最後の都”ビルカバンバを拠点に抵抗を続ける。
 マンコ・インカの死後、最後の“皇帝”となったトゥパク・アマルは、1572年に捕えられ処刑されるが(インカ帝国は名実ともに滅亡する)、莫大な量の黄金が隠されているとも噂されたビルカバンバの所在については、一切口を割ろうとしなかった。

 インカ帝国の首都だったクスコから北西に100キロほど、標高約2500メートルの山岳地帯に、廃虚となった“空中都市”マチュピチュが発見されたのは、1911年のことである。発見者であるハイラム・ビンガムは、マチュピチュこそビルカバンバであると確信していたが、疑問視する声も多い。
 ――マチュピチュでは、黄金が見つからなかったからである。

 だから、南米の密林の奥深くにエル・ドラド(黄金郷。特定の都市を指す言葉ではない、と思う)が眠っている、とサー・バン・アレンが考えても不思議ではない。ただし、今の世の中には、衛星写真なんてのもあるので、地中に埋もれてたりしない限り、“幻の都”の存在は限りなく小さい。

 ちなみに、イシュキック、カブラカンは、マヤ神話の登場人(?)物で、ピラミッドもマヤの遺跡が有名である(マヤのピラミッドは、墓ではなく、神殿の土台だった)。
 メキシコ高原で栄えたマヤ文明が独特の時間概念を持っていたことを考えても、サー・バン・アレンや009たちの見た黄金のピラミッドは、インカではなく、マヤの民の残した遺物であった可能性が高い(ピラミッドには空間移動能力もあったのだろう)。

 それにしても、イシュキックの“創造主たち”はどこに去ったのか?
 時空の異なる多重世界(パラレルワールド)、というのは紺野さんお気に入り(らしい)の『番長惑星』だが、これは『009』なので、27、28話に登場した異次元世界であろうか。(単に“世界”であって、固有名を持たないのは、すごく不便だ)
 異次元からきた子供たちが、実はインカ(またはマヤ)民族の子孫だった、とかいうのは個人的にはツボなのだが、インカもマヤも闘いを忌避するような種族ではないので、“こっち”の世界を訪れた異次元の人たちが、インカ(またはマヤ)文明に影響を与えたのかも知れない。
 ていうか、単発の読み切りとして発表された原作とは違って、一年間のシリーズの中の一エピソードとしてやってるんだから、そのぐらいの裏設定みたいなもんはあっていいと思うんだけど。(今回単独で見れば、(平ゼロには珍しく)各キャラの感情の動きも納得できて、特にケチをつけたくなるような部分って無いですが)

 どこから来たのか、どこに去ったのかはともかく、イシュキックやカブラカン、時空をさまようピラミッド等、高度なテクノロジーを持った種族が、そのテクノロジーを財宝を守るために使ってる辺り、かなりあさましい種族だったようである。
 

 素朴な疑問。
 以前はもっと黒っぽかったような気がするんだけど、ここんとこ夜空が青くないですか?
 背景が真っ黒だとセルのキズや汚れが目立つからTVアニメの夜空や宇宙空間は青い、って聞いたことがあるけど、平成版『009』はセル使ってないよね……?
 

(2002/7/1)



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