世界各地で原因不明の異常現象(事件事故)が起こるのは、ミュートス、異次元からの子供たちに続いて今回で三度目。二度あることは三度あるとは、昔の人はいい事言うね。
『青いけもの』は、1971年に発表された石ノ森章太郎の(『009』とは別の)作品である。
現在、単行本等の入手は困難なようなので簡単に紹介すると、このマンガには、えーと、青いけものが登場する。
で、青いけものを巡って紆余曲折があった後、えーと、青いけものとは“何”なのかという衝撃の真相が明らかにされるような、されないような……。(あなたは今、実は私が『青いけもの』を読んだことがないのではないか、などという非常に失礼な疑惑を抱いているものと邪推するが、その通りです。ごめんなさい)
そんなわけで、'71年版青いけものの正体は置いといて(うわさによると白血球らしい)、平成『009』版青いけものの正体は、地球そのもの、であるようだ。
005が青いけもの(=地球)との深遠(?)な対話をする一方で、ファンサービス出演(?)の009と003は、青いけものが去ったあとも「ブラックゴースト……?」と疑い続けているため、製作者側が意図した今回のテーマは、“人間が身勝手に地球環境を破壊し続ければ、やがては……”といった比較的ありがちなものではなく、“目的はともかく、表面的には、地球(の意志)もブラックゴーストもやってる事は同じ”であると受け取れてしまうのだが、どうなのだろうか。(この疑問を解くカギは、ファンサービスにもなっていなかった002の登場と(放送はされなかったが)その後の言動にあると私は睨んでいるのだが、おそらく、あまりにも衝撃的な内容のため割愛されたのであろう。残念な事である)
地球に“意志”があるかどうかは別にして、地球を一つの生きた生命体として捉える見方をガイア仮説(後に理論に昇格した)という。
ミュートス・サイボーグを造ったガイア博士が1970年ごろ提唱した。と言いたいところだが残念ながらそうではなく、提唱したのは、ジェイムズ・E・ラヴロック博士である。
'60年代にNASAの火星生物探査計画に参加し、生命探査の手法を確立したラヴロック博士は、地球の大気が非常に特異な状況にある事に関心を抱く。火星と金星の大気組成から類推される、(生命が存在していない場合の)地球の大気は、二酸化炭素濃度98パーセント(実際には0.03パーセント)、酸素は微量(実際には21パーセント)、表面温度300度、大気圧は60気圧(実際の60倍)に達しているはずである。しかし、現実の地球の、化学的に不安定なはずの大気組成は、地球に生命の誕生した40億年前からほぼそのまま維持され続けている。
生物は自身の体調を調整・維持する恒常性(ホメオスタシス)を持つが、ラヴロックは、地球上のあらゆる生物と大気や海洋などの物理的化学的環境との絶え間ない相互作用によって、地球そのもの(厳密には地球生命圏)が、自身の環境を維持する自己制御システム、すなわちホメオスタシスを持つ“一個の巨大な生命体”であると見なし、これを“ガイア”と名付けた。
「地球は生きている」という表現は、あくまでもメタファー(喩え)なのだが、この力強い言葉は環境保護運動に大きな影響を与え、拡大解釈されて、(多分)青いけものを生み出すに至る。
生命誕生から40億年の歳月を“生き”、さまざまな種の栄枯盛衰を見守り続けてきた青いけもの(=地球(=ガイア?))にとって、人間という種の一つや二つどうなろうと知った事じゃないと思うのだが、わざわざ“警告”に現れたところを見ると、そうでもないらしい。
地球が一個の生命体ならば、人間はその中で異常に増殖するガン細胞である、という考え方がある。人間がガンであるのならば、その行き着く果ては、寄主である地球(=ガイア)の“死”であり、ガイアの“死”は、地球上の全生物(当然人間も含まれる)の死滅と同義である。
青いけものの出現は、自らの死期が近づいている事を感じたガイアの悪あがきだったのかもしれない。
青いけものが去る事で005の手に委ねられたのは、人類の存亡などというちっぽけなものではない。
ガイア(=地球)の運命である。
さて、ガンの治療法として一般的なものの一つとして、放射線療法が上げられるが、これをガイアに当てはめた場合、該当するのは、核爆発や原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)であろう。
多少の副作用や再発の危険もあるし、目的が違うかもしれないが、青いけものは、今すぐブラックゴーストと手を組むべきである。
参考
ジェームズ・ラヴロック インタビュー
ガイア説:地球は生きているのか?