突然ですが、私は太っ腹な人間なので、ケチ臭いことは言わないのである。
だから、22話から25話まで、ミュートス編を一気に見てみるのである。
おぉっ、面白いぞ!
22話の兵士の死を透視した後の003と009の一連の会話も、原作の印象的なエピソードを使ってみました程度のものと思っていたら、きっちりラストに直結する場面に仕立てていたのですね。通して見て初めて気付いたよ。
文句のつけようがない、とは言わないけど、全体的によく練り込まれた脚本だなあ、と思う。これならハリウッド関係者もパクリ甲斐があるってもんだ。(←褒め言葉です)
と同時に、しつこいようだがアルテミスが003の台詞を回想するシーンだけは違和感が際立って、やっぱりここだけは逆立ちしても納得できない。(「これが平穏だと言うのか」が009の台詞だからこそ、アルテミスは009と話がしてみたくなったのではないか?) 他の部分がかなり良くまとまっているだけに、もったいないことこの上ない。ミュートス編最大のキズであると断言する。
脚本上にしろ演出上にしろ、何か意味があるというなら、誰か説明して欲しい。ていうか、責任者出てこい。(せめて、DVD
版で修正されることを祈ることにする。えーと、これは誰に祈ればいいんだっけか?)
そんなわけで、
22話 神々の襲来
世界各地で起こる異常現象、ってのは、4話に渡るエピソードのツカミとしては適切なのかもしれないが、アポロンたちの意図である(らしい)「神」の力による平和の実現、という観点から見ると疑問を感じる。
世界各地の異常現象は、全ての人間は堕落しているのだからして、問答無用無差別に「神の裁き」を受けるべきである、もしくは「神」の力を誇示するため、なのだろうが、「神」の意図としては、やや説得力に欠けるような気がする。(もっとも、神の深謀遠慮が私ごときに分かろうはずがない)
「異常現象の起きた地点を結ぶと……」というのもお約束の部類だとは思うのだが、「世界各地」よりむしろ、「A国とB国が交戦している戦場」に限定して異常現象が頻発した方が、009たちも「もしやブラックゴーストでは?」と出動しやすいし(22話の製作スタッフの皆さんは知らなかったかもしれないが、ブラックゴーストが滅びていないらしいことは19話で示唆されている)、アポロンたちの意図として、様々な「奇跡」を起こして戦争をやめさせようとしたが、なおも戦争を続けようとする人間たちに対する「神の裁き」として、町一つを消滅させた、みたいな流れがあった方が、アルテミスの問いかけ(人は戦いをやめることができない、だから「神」が必要だ)も、より重いものになったのではないだろうか。
テーマ性よりも派手さ(?)を優先させた結果なのだろうが、ちょっと残念。
23話 そびえ立つ神話
009vs アポロンで、009がほとんど逃げ回ってるだけでやられちゃうのは、25話で肉弾戦(?)をたっぷりとやるから控えめにしたんだろうけど、この回で「あとは勇気だけだ」を言わせることを考えると物足りないとしか言い様がない。
平成版『009』の中では平均点以上の出来だとは思うけど、原作を知っていると、意表を突かれて圧倒された22話に比べて、23話(後半)はほぼ原作通りの展開で意外なくらい意外性がなく、その分損をしてるような気もする。ただ、作画は別にしても、カット割り(絵コンテって言うんですか?)とか細かい工夫に欠けてるのも確かで、ちょっと残念。
24話 アルテミス
どっちかって言うと25話に向けた準備エピソードな要素が強いが、23話より面白いと感じちゃうのは、意外性があるからだろうか? (個人的には、カバ男の登場が一番意外だったけど)
ミュートスの正体も(ほぼ)判明したし、アキレスの弔いで「神様ごっこ」も印象づけたし、009とアルテミスの対話で二者の立脚点の違い(と共通点)もはっきりしたし、……あとは決戦だけだ!
25話 ミュートス、終章
それにしても動く。場面によっては、絵が動いてるというより画面全体が動き回ってるみたいで気持ち良かった。(視点(カメラ)がぐりぐりと動き回る(ように見えた)表現は、石森マンガでもよく使われていた手法だ)
作画の善し悪しについては、DVD で修正される可能性が高い、TV アニメの平均的なレベルを知らない、そもそも実はよく分からない、等の理由で、『幽霊島』では原則として触れないことにしていたのだが、こういうのを見せられると、絵が動いてこそアニメだよなあ、と実感する。
さて、23話の「あとは勇気だけだ」のあっさりした使い方も、ミュートス編ラストできちんと受けてくれれば(つまり、「勇気」がきっかけで状況が転換するような展開になれば)、むしろ演出的意図として解釈するべきかもしれない、と思っていたら、やっぱり受けてくれました。
「勇気など何の力にもならないではないか」と、009にとどめをさそうとするアポロンの前に、009の「あとは勇気だけだ」の言葉に感銘(?)を受けたアルテミスが飛び出してアポロンに真実を伝え、アポロンは009との戦いどころではなくなってしまう。
つまり、紛れもなく、「勇気」がきっかけで状況が転換している。
転換はしているんだけど……、「勇気」の使い方が間違ってないか、009? (そんな風に思っちゃうのは、私のひがみであろうか?)
ここで個人的趣味を言わせてもらうと、火山島マグマ崩壊の際に、「早く脱出しよう」と言うミノタウロスに、ポセイドンが「神ならざる神である我々が生き続けても、この世界に居場所はない」みたいなやり取りが欲しかったような気がするんだけど、何も言わない方が余韻があっていいような気もするし、でも、ギルモア博士に解説させるんだったら、本人たちの言葉で語ってもらいたかったような気もするし、「本当に言いたいことはチョコレートに包みなさい」とか言った映画監督がいたらしいが、言いたいことを言うより、言いたいことを言わない方が遥かに難しいのも事実で、何が言いたいかよく分からなくなってきたので、これ以上は言わない。
最期まで「神様ごっこ」を演じ続けた(本人たちは「演じている」つもりはなかっただろうが)「神々」の姿は痛々しかった。
個人的には、想像力を刺激するのがよい物語、だと思っているので、そういう意味でも、ミュートス編はよい物語だった。
心より「神々」の皆様のご冥福をお祈りいたします。(えーと、これは誰に祈れば……)
(2002/4/16)