第19話 悪の化石


 風邪(ていうかインフルエンザ)でダウンしてしまい、日曜日の午後6時33分ぐらいからは、38.6度の熱のせいか、テレビの画面が歪んだり、009の欽ちゃん走りが見えたりなどの幻影幻覚に苛まれ、未だに後遺症が持続している。自分だけかと思ったら、どうやら全国的に突発的な幻覚に悩まされた人が発生していた模様で、もしかすると、電波を使ったブラックゴーストの新兵器かもしれない。(ブラックゴーストは電波を使うのが好きだ)
 恐ろしいことである。
 

 さて、ここは「幽霊島」なので、喉が痛くてもとりあえずやるのである。

 恐竜は爬虫類の一種であり、変温(冷血)動物だと考えられていた1964年、それまでの恐竜観を一変させる化石が発見された。
 ジョン・オストロム博士がアメリカ・モンタナ州で発見した小型肉食恐竜の化石は、鉤爪のついた大きな前肢、後肢の第二指にも鎌のように発達した巨大な鉤爪を備え、強靭な顎と鋭い歯、長い尻尾、大きな脳を持ち、この恐竜が高い運動能力と高度な知能を持っていたことを予想させるものだった。
 「恐ろしい爪」を意味するディノニクスと名付けられたこの恐竜は、極めて敏捷(走る速さは最高で時速50km に達する)、獰猛で、群れを作って狩りをしていたと考えられ、変温動物とみなすには無理がある。オストロム博士は、ディノニクスが哺乳類なみの代謝機能を持つ恒温(温血)動物であると結論づけた。(余談だが、熱っぽいのと寒気が交互に襲ってくるので、私は変温動物かもしれない)
 さらに、ロバート・バッカーはこの説を押し進めて、全ての恐竜が恒温動物だと主張しているが、これにはロス博士が指摘する通り異論もある。ただし、小型肉食恐竜が恒温動物であったことはほぼ認められているし、恐竜=恒温動物説も徐々に認められつつある。(大型恐竜の場合、慣性恒温(一種の擬似的な恒温)動物という説もある)
 どちらにしても、現在考えられている恐竜の生態や習性は、爬虫類よりも鳥類や哺乳類に近く、従来の(私がお子ちゃまだった頃の)のそのそまったりと動き回る恐竜のイメージは完全に覆ってしまっていると言っていい。

 一時期、恐竜が鳥類の直接的な祖先であるという説が流行ったが(小説『ジュラシックパーク』はこの説に基づいていて、渡りの習性を持つ恐竜なんてのも登場している)、現在では、鳥と恐竜は、三畳紀中期に「ダイノバード (dino-bird)」と呼ばれる共通の祖先から枝分かれして別々に進化したという説が有力視されているようだ。
 鳥繋がりでいうと、1990年代半ば頃から羽毛ないし体毛の残っている恐竜の化石が相次いで発見されている。この中には、ディノニクスの遠縁(?)に当たるシノオルニトサウルスの化石もあり、ディノニクスも含め、かなりの種類の恐竜が羽毛ないし体毛を持っていた可能性もある。

 ちなみに、『ジュラシックパーク』で大活躍したヴェロキラプトル(終盤、姉弟を追っかけまわしてたヤツ)は、ディノニクスの親戚である。ていうか、映画に登場したのは、ラプトルというよりディノニクスだったらしい。(ディノニクスは白亜紀前期の恐竜で体長3m 前後、ヴェロキラプトルは白亜紀後期、モンゴルを中心に発見されていて、体長1.8~2m でひとまわり小さい)


 ゴッドフリート・ロス博士は、ロボット工学者であって古生物学者ではないので、別に最新の知見に基づいた恐竜ロボット(例えば、最新の研究では、ティラノザウルス・レックスはゴジラ風に直立しているのではなく、かなりな前傾姿勢を取る)を製作する義務も必要性もない——

 ——のだが、少なくとも原作「ディノニクス編」発表当時は、恐竜恒温動物説はかなり目新しい学説だったはずだし、フィクションの世界にディノニクスを登場させたのも当時としてはかなり斬新だったのではないかと思う。
 穿った見方かもしれないが、「ディノニクス編」の根底には、恒温動物説や当時の常識を覆す獰猛なディノニクス像など、最新の学説に対する、作者石ノ森章太郎自身の新鮮なオドロキがあったのではないだろうか。そのオドロキを読者にも伝えたい共有したいという思いがあったのではないだろうか。
 石ノ森マンガが常に科学的に正確であったなどと主張する気は毛頭ないし、平成版アニメがそうであるべきだとも思わないが、「ディノニクス編」を映像化するにあたって、二十数年前の原作をほとんど機械的になぞることに終始して、一体何の意義があるというのか。(絵がもうちょっとマシだったら、じゃなかった、熱に浮かされて幻覚を見なかったら、大分印象は違ったかもしれないが)
 しつこいようだが、「原作の大胆なアレンジ」を標榜するのならば、原作者が「ディノニクス編」で意図したものを汲み取った上で、最新のデータを取り込みつつ原作を再構成するべきではないか、というのは現状では酷な要求なのだろうなあ。(涙)
 今更どうにもならないとは言え、やっぱり一年ぐらいは準備期間を取った上で製作に踏み切って欲しかった。

 余談だが、私が目にした範囲内では、恐竜絶滅はもれなく6500万年前と書いてあった。純真なお子ちゃま視聴者の皆さんに「7000万年前」という、誤った知識を与えかねない表現をすることにどんな意味があるのか。お子ちゃまを対象とした番組としては、少々無責任ではないだろうか。この点だけは、他の科学的テキトーさとは重みが違うように思う。(どこがどう、と言われると説明できなかったりするのだが)
 それとも最近の教科書では「7000万年前」になってるんだろうか? 

 「もれなく6500万年前」などと書いてしまったが、原作「ディノニクス編」でも「7000万年前」  と表記されてました。どこで見たか忘れたけど、結構古い本で「7500万年前(に恐竜滅亡)」と書いてるのもあったので、多分、原作発表当時(1976年)の“常識”では、恐竜絶滅は「7000万年前」だったのだと思う。
 だからって、こんな所ばかり律義に原作に忠実に作られてもなあ。

 ところで、原作での、すでに滅びてしまったブラックゴーストの再興を画策するキーリーに対する「化石」の喩えは説得力があるが、アニメ版での、実は滅びていない(らしい)ブラックゴーストの一員であるキーリーに対しての「化石」の喩えは、ちょっとズレてないか?
 原作知ってると何となく誤魔化されそうだし、知らない人もピンとこないまま納得しそうな気もするが、そんなに無理してまで「化石」の喩えを使わなきゃならなかったのでしょうか。ていうか何も考えずに原作の台詞を流用してる気が……。
 
 
 

今週の001
こんなどーでもいい場面で喋らなくても……、もったいない。(すいません。貧乏性なもので)
 
 
 

(2002/2/28)
(2003/3/17 一部補足)

 
 

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