今回はちゃんとしてた。
冒頭、反政府ゲリラのリーダーであるカボレが、一般市民らしき人たちの先頭に立って抗議行動をしているのには違和感があるし、終盤の「これが俺達の望んだことなのか……」もこの場面の台詞としてはかなり安易で(仲間の死に動揺して自らのゲリラ人生を否定するような発言をしてしまっては、リーダー失格)、使う場所を間違っているような気がするが、全体的には手堅くまとまっていて、久しぶりにちゃんとしてた。
「ちゃんとしてた」が、褒め言葉と言えるのかどうかはよくわからないが。
008が飛行するドルフィン号の上に乗っかっていたのは、比較的突っ込みどころが少なかったための、我々(←?)に対するスタッフの配慮であろう。
せっかくの配慮を無視するのも何なので、008がドルフィン号の上にいたのはなぜか考えてみると、
その1 ドルフィン号のメンテナンス作業をしていた。などの可能性が上げられるが、常識的に“その3”であると解釈するのが妥当と思われる。
その2 通常の見張り業務。
その3 一人になりたかった。
008、ピュンマの故郷、ムアンバ共和国内戦の背景には、メタルXなる高エネルギー鉱石の存在がある。
メタルXの正体は不明だが、メタルなだけに、広い意味でレアメタル(稀少金属)と解釈してもいいだろう。レアメタルと言えば、最近注目されているのが、携帯電話など
IT 機器で使用されるタンタルであり、タンタルと言えば、世界の四分の一を産出する中央アフリカのコンゴ民主共和国である。(タンタルについては、「3000度はどのくらい熱いか」でちょっとだけ触れている。008の故郷について相変わらず的外れなことを書いているが、気にしないように)
そんなわけで、コンゴの歴史。
14世紀に成立したコンゴ王国は、15世紀頃からポルトガルと交易、当初は対等な関係だったが、やがて奴隷供給地と化し、王国は衰退(17世紀末事実上滅亡)。
1885年欧米十五カ国が調印したコンゴ盆地条約によってコンゴはベルギー国王レオポルド二世の私有地となり、1908年ベルギー政府に植民地として譲渡。
第二次世界大戦後、民族独立運動が高まり、1960年、コンゴ共和国として独立。直後に内乱勃発(コンゴ動乱)。
カタンガ州の豊かな鉱物資源に目をつけた旧宗主国ベルギーは、分離独立運動を陰で支援、欧米諸国も利権確保のために曖昧な態度に終始し、紛争は長期化する。
'62年末の国連軍の介入を経て、'65年動乱終結。同年、中央政府の軍司令官モブツがクーデターにより政権を掌握、大統領に就任し、以後三十年以上続く独裁体制を敷く。
'71年、国名をザイール民主共和国に改称。
'91年頃から治安が悪化。冷戦時代には反共産主義のモブツ政権を支持していた欧米も次第に距離を置くようになる。
'94年、ツチ族とフツ族の民族対立による隣国ルワンダの内戦により大量のフツ族難民が流入、対立がザイール国内にも飛び火。
'96年、フツ族寄りのモブツ大統領に対して、ローラン・カビラが反政府組織
ADFL を結成、ツチ族国家ルワンダやウガンダの支援を受けて、'97年5月首都キンシャサを制圧(この過程で
ADFL 軍は、8万人以上のフツ族難民を虐殺したと言われる)。カビラは大統領に就任、国名はコンゴ民主共和国に戻された。(モブツは亡命し、9月死去)
'98年8月、エルネスト・ワンバ教授が指導するコンゴ民主主義運動が東部ゴマで武装蜂起して内戦勃発。新政権のフツ族対策に不満を持ったルワンダ、ウガンダ、ブルンジが軍事支援。
一方、カビラ政権を支持するアンゴラ、ジンバブエがコンゴに派兵、アフリカ大戦とも称される国際紛争に発展。
'99年8月、関係国及び反政府勢力が停戦に合意(ルサカ合意)するが守られず。
2001年1月、カビラ大統領暗殺、息子のジョゼフ・カビラが新大統領に就任。
2月、戦争当事国及び反政府三組織が停戦協議。
3月、ウガンダ、ルワンダの軍が撤退開始。
以降の状況に関する情報は見つけられなかったのだが、政府軍と反政府軍('98年12月の時点でコンゴのほぼ半分を制圧)の対立は膠着状態に陥っていると思われる。
事態をややこしくしているのは、ダイヤモンドやコバルト、それにタンタル等、コンゴの豊富な鉱物資源である。介入している各国には、民族問題だけでなく、コンゴの鉱物資源の利権確保のねらいもある。
政府側は政府側で鉱物資源の利権をエサに同盟国の支援を取り付けているし、反政府勢力はいち早く鉱山を押さえ、「民主化」をスローガンに掲げる一方で、地元住民の採掘権に二重三重に課税して資金源にしている。隣国ルワンダもコンゴ領内に軍を入れて平然とタンタルを掠め取っているらしい。
ダイヤモンド一個につきアフリカ人一人の手足が切断されている、という話もあるらしいが、携帯電話一台だと……、これはよくわからない。
現在、国や国民を豊かにもできるはずの鉱物資源によって得られた富は、その大部分が兵器の購入資金に充てられている。
以上、現実の出来事。
こういうことは、コンゴに限ったことではない。多くのアフリカの国(アフリカに限ったことでもないが)が、民族問題やら宗教問題やら独裁体制やらそれに端を発する内戦やらを抱えている。
もちろん、メタルXはタンタルではないし、ムアンバ共和国はコンゴではない。反政府ゲリラのリーダー・カボレは、純粋に自由な国を求めているだけだし、ムアンバには深刻な民族問題もない。旧宗主国グルトニアが現政権に肩入れしていた以外は、周辺諸国や欧米も表立った介入はしていないようである、今のところは。
「幽霊島」的には、ムアンバ共和国の歴史でもデッチ上げるべきだったかとも思うが、見逃してやって下さい。
さて、混迷続くムアンバ共和国の未来に、平成版『サイボーグ009』は、どのような答えを出すことになるのだろうか。
以下を参考にしました『超人 Multi Art-Science Space』の『ハイパーリンク世界史事典』の『コンゴ』
コンゴ史年表。内戦の背景(欧米の思惑や民族問題)についての解説。
NHKスペシャル『戦場のITビジネス〜狙われる稀少金属タンタル』コンゴのタンタルを巡って暗躍(?)する様々な勢力を追ったドキュメント。ビデオ等にはなってないと思いますが、機会があればお勧め。