第12話 なぞの無人島

 『サイボーグ009』の「現在」について、当初、003の発言を「私たちが改造されたのは五十年前、……」であったと勘違いしたあげく、勘違いに基づいたまま記述してしまいました。関係者(?)並びに読者の皆様、慎んでお詫びいたします。
 なお、該当部分は、苦し紛れながら訂正しました。
 

 今更な話題だが、前回新たな考察材料が得られたので、『サイボーグ009』の現在について考えてみる。
 003、フランソワーズ・アルヌールが幼い頃見ていた『赤い靴』は、1948年公開のイギリス映画である。彼女が当時五歳とすると、ブラックゴーストに拉致されたのは彼女が十九歳になる1962年頃。ベルリンの壁が構築されるのが1961年だから、004の改造時期とも矛盾しない。
 問題になるのは、第4話における003の「私たちが改造されたのは、あなたが生まれるずっと前、ヨーロッパの戦争が終わって間もなく」という発言である。「ヨーロッパの戦争」は第二次世界大戦を指していると思えるのだが、終戦時点で二歳前後だったはずの彼女が二十年近く前の出来事を「間もなく」と表現するのはかなり無理がある。(十七年を「二十年近く」と表現するのはそれほど無理ではないと思う)
 この点を考慮すると、フランソワーズ・アルヌールはかなり大雑把な女である、と断言せざるを得ない。こんな大雑把な女に敗れたのである。ナタリーもさぞや悔しかったことだろう。
 003の4話におけるもう一つの台詞、「生きていたとしても(兄に)会う気はないわ」を、この時点で彼女の兄が生きていたとしても相当な高齢になっている、と解釈する。彼女の兄、ジャン・アルヌールの1962年時の年齢を二十一、二歳、「相当な高齢」ラインを六十歳以上とすると、「現在」は2000年以降、と推定される。(この推定自体、非常に脆弱な基盤の上に立っていることをお断りしておく)
 
 さて、11話ではもう一つ決定的な考察材料が登場する。
 月である。
 画面で確認した限りでは、月齢18前後(満月をちょっと過ぎたくらい)、2000年以降で12月24日の月齢が18前後になるのは、2002年、2010年、2021年、……以下略。
 仮に2010年とすると、第11話は、西暦2010年12月24日の出来事である。 (なぜ2010年かというと、私の勘違い以外の根拠はない)

 ついでなので、更に続ける。
 11話以前に画面上で月が登場するのは、第4話だけであり(確認はしてませんが)、このときは満月だった。
 2010年で満月になる日を調べて見ると、12月22日、11月23日、10月24日、9月25日……、となる。
 第4話で目覚めた001は、5〜9話では寝てるんだか起きてるんだかよくわからないが、(多分)寝ている。10話では起きているので、この時点で4話から三十日以上が経過している。11話では再び眠っているようだが、不必要に日数を水増ししても意味がないので、観察日記的には、第4話は10月24日の出来事である、と断定する。
 更に、第2話ラストから第4話までに十五日が経過しており(観察日記4話参照)、1〜2話が二日間の出来事と考えれば、009の(サイボーグとしての)誕生日は、2010年10月7日になる。 (←2010年に根拠はないってば)

 なお、以上の考察は、あくまでも月が現実の法則に従っているという前提に基づいている。当然、『009』の世界における月が物理法則を無視した周期で地球の周りを公転したり(場合によっては公転しなかったり)している可能性もある。
 原作『海底ピラミッド編』では、アイザック・アシモフの「月は一体なにものなのか」という言葉を引用して、月が不可解な存在であることが示唆されているため、月が現実の物理法則を無視しているのではないかという疑惑は一層深まる。この場合、もちろん最終編の伏線となっていることは間違いない。(誰か止めてください)

 ところで、002が言及した「センチメンタル・ジャーニー」は、松本伊代の、ではなく、ジャズの名曲で、「古い記憶を新たにするために(To renew old memories)」久しぶりに故郷に帰る、という内容の歌。1945年、終戦の年にアメリカで大ヒットした。
 スタンダード・ナンバーとして現在でも耳にすることがあるので、002が知っていても不自然ではない。

 今回。
 放棄された基地の番をするロボットと006との友情、お話としては悪くないと思うのだが、前回同様、ブラックゴーストとの(とりあえずの)決着がついた後のエピソードにしといた方が、流れとしては自然に思える。そうすれば、なぜ正常に稼働可能な(ように見える)基地をそのままの状態で放棄したのか、という点も納得できる。
 実はやっぱり、南極にブラックゴーストの本拠があって、そいつを破壊されたために、統一された組織としてのブラックゴーストは崩壊、残るは各地に割拠している残党のみ、ということなのだろうか。ていうか、南極に二話ぐらい費やして、そういう流れを組むべきだったのではないか。
 11、12話は、いわば「静」の物語であり、10話までの「動」から、曖昧なまま「静」にシフトされるのは非常にキモチ悪い。10話が、中途半端で投げやりな結末のおかげで、「動」から「静」への転換点になるようなエピソードとして成立していないのだ。
 当初の予定から変更されたのか、最初からいい加減なものだったのか不明だが、シリーズとしての構成がどうにもちぐはぐに思えてならない。

 さて、今回のサブタイトルは「なぞの無人島」であるが、最大の「なぞ」は、この無人島の季節(または位置)である。     
 いくら何でも前回から半年以上経過しているとは思えないので北半球は冬のはずだし、前回パリで次回ロンドンだからドルフィン号もドーバー海峡近辺にいるはずなのだが、どう見てもこの島の季節は、夏である。
 テレ東ホームページによれば、「食料調達」の途中だったようだが、一体どこまで調達しに行ったのか。「一流の料理は一流の素材にあり」などと、妥協のない素材選びの結果、かなりの遠出(たぶん赤道近辺まで)をしたに違いない。そりゃあ、燃料も無くなるわな。
 メンバーの中にそれほどの美食家はいないと思うぞ、006。
 003あたりは、それなりに舌が肥えてそうな気はするが、彼女の場合、カタツムリでも捕まえて中華風にアレンジしとけば済む話で(暴言)、遠出の必要などないはずだ。ひょっとしてひょっとすると、ギルモア博士が高官燕喜とか三糸魚翅夷とか甲魚肉片子湯とか青椒肉絲とか広東拉麺とかを食いたいなどとわがままを言い出したに違いない。これだから年寄りは……。(泣)

 と書きつつ、ドルフィン号が迎え(?)に来ているところを見ると、やはりドーバー海峡近辺の小島なのかもしれない。位置的に、天気が良ければ、イギリスなりフランスなり見えそうな気もするが、知らなかったことにしとこう。
 この場合、小島はブラックゴーストの気象制御(変動)兵器の実験場であった。だから冬なのに夏のような気候なのである。しかし、この兵器の副作用(?)によって、周囲の木々が青々と茂っているにも関わらず果物の木だけが枯れたり、川が干上がったり、食人植物が繁殖したり、周囲の海域に渦が巻いたり、突発的に嵐が起こったりするようになり、最終的に基地を放棄せざるを得なくなったに違いない。(こんな絶海の孤島に基地を作った理由も明らかだろう。なんか工場みたいな設備もあったが、細かいことを気にしてはいけない)
 5、6、7が島に漂着したときは、たまたま気候の安定状態にあっただけであり、その点不幸中の幸いであった。(遭難の原因になった嵐は、もちろん気象兵器の影響によるものである)

 何だか、まるっきり異なる二つの結論が出てしまったが、お好みに合わせて納得してください。(わしゃ、テレ東の回し者か……)
 

(2002/1/8)
(2002/1/13 改訂)


  月齢に関しては、『暦の部屋』で調べました。


 

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