第10話 オーロラ作戦

 
 

 とりあえず、前回の補足。

 1979年11月9日、コンピュータのミスにより、6分間に渡って全米軍が核攻撃警戒態勢を取った「核ミサイル誤射寸前事故」が起こる。この「事故」が軍関係者を驚愕させたのは、「事故」そのものよりも、ミサイル部隊の多くが「発射のキーを入れよ」という最終命令に従わなかったという点にある。グランド・フォークス空軍基地では2人、マッコネル空軍基地では実に17人中13人が命令を拒否したという。(映画『ウォー・ゲーム』('83米)のパンフレットより)

 何しろ、自分の指が人類を滅ぼすかもしれないのだ。まともな神経とわずかな想像力があれば、命令不服従で処分される方がマシだと考えるのは当然のことだろう。
 とはいえ、軍あるいは国家にとっては、ミサイル要員が肝心なときに発射ボタンを押さないようでは意味がない。忠誠心に厚く、上官の命令には絶対服従、なおかつ想像力に乏しく、無神経(神経質だとプレッシャーでノイローゼになってしまう)というのが、軍あるいは国家にとっての理想のミサイル要員である。
 優秀なる我が『幽霊島』の読者諸君ならもうお気付きであろう。前回大活躍したメガネ君こそ、上の条件を全て満たす理想のミサイル要員である。しかも彼は、スイッチを押すという一点において類い稀なる才能を有している。その貴重な人材を13ロボの電子頭脳回収(実質的には00ナンバーをおびき出すおとり)などという最も不向きな任務につけるとは、なんと勿体ないことをするのか。ブラックゴースト内部に適当な部署がないのなら、米軍にでも派遣すれば良かったのである。
 科学者の処刑も含め、貴重な才能を浪費するブラックゴーストが現代の過当な競争社会で生き残っていけるのかどうか、非常に不安である。

 

 さて、第10話。
 前回の自爆ネタ、たまにはこういうのもアリかな、と思ってたら、「たまに」じゃなかったのですね。(泣)
 フランス人将校イヤミ氏(仮名)の特攻で南極秘密基地大爆発では、サイボーグ戦士のみなさんにとっても達成感も充足感も得られず、空しいばかりだったのではないだろうか。ああ、そういえば『サイボーグ009』のテーマは、戦いの空しさだったっけ。いっそのこと、イヤミ氏が「シェーッ」と一言叫んで散っていったら、空しさも際立ったのに。

 どうせ「自爆ネタ」をやるならやるで、例えば、

 

○南極、地上
 

   マッドマシンの放射する電磁波に
   苦しむ00ナンバーサイボーグ達。

イヤミ「おほほほほ、相当苦しんでるみたいね。出力を最大にしてあげるわ」

   イヤミ、ダイヤルを最大にする。
   異様なうなりをあげるマッドマシン。
   のたうちまわるサイボーグ戦士達。

イヤミ「おほほほほほほほほほほほほほほほほほほ……」

 

○基地内のコントロールルーム
 

   兵士達が計器などをチェックしている。
   突然、照明が消え、計器の表示が乱れる。

兵士A「な、何だ? どうしたんだ?」

兵士B「(計器を調べて)ど、どうやらマッドマシンが基地のシステムにも影響を……」

兵士A「お、おい。この基地って制御システムに異常が起きたら、自爆装置が作動するんじゃなかったっけ」

兵士B「(計器を調べて)いえ、自爆装置も影響を受けて動作していないようであります」

兵士A「(ホッとして)脅かすなよ。はは、は……」

 

○地上
 

   苦しむサイボーグ、なす術なくオロオロするギルモア博士。
   更に異様なうなりをあげるマッドマシン。

フィンドル教授「(ハッとして)マシンを止めろ! オーバーヒートするぞ」

   バチバチッとマッドマシンの操作盤から火花が出る。

イヤミ「ひえっ(慌ててマッドマシンをオフにする)」

   倒れている009。

009「(顔を上げて)止まった? よし!」

   009、加速してマッドマシンにスーパーガンを撃ち込む。

イヤミ「シェーーーッ!」

   マッドマシン、爆発、炎上。イヤミも巻き込まれる。
   息を切らせて、がっくりと膝をつく009。
   他のメンバーはよろよろと立ち上がりはじめる。

フィンドル教授「(呆然とマッドマシンの残骸を見つめ)設計限度の二倍以上の出力の装置を作ってたのか。なんて奴らだ……」

 

○コントロールルーム
 

   照明がつき、計器も正常な表示値に戻る。

兵士B「元に戻ったようです」

兵士A「よし、システムの再起動を……」

警報「ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ……」

兵士A,B「(顔を見合わせて)自爆装置!」

 

○地上
 

   ズズズーン……と地響きがして、基地から爆煙が上がる。

一同「?」

009「何が、起こったんだ?」

ギルモア博士「うーむ。おそらくあの装置の影響によって基地の武器システムが誤動作を……」

002「自業自得ってわけか。ブラックゴーストらしいぜ」

フィンドル教授「(呆然と)そ、そんなはずはない。無力化されるはずだ……」

 

○地上
 

   B.G.M. 空虚なる勝利(仮題)

   輸送機に乗りかけるフィンドル親子。
   見送るギルモア博士と00ナンバーサイボーグ。

フィンドル教授「奴らは、『平和のための研究』という口実で私を騙してこの基地に連れてきた。私は、妻を殺した兵器をこの世から無くしたかった……」

ギルモア博士「しかし、奴らはあなたの頭脳を悪用した」

フィンドル教授「だ、だが、使い方さえ間違えなければ、マッドマシンは他の兵器を無力化する、平和のための兵器として……」

005「平和のための兵器……、そんなもの、ない」

004「ああ、その通りだ。『平和のための兵器』なんて誤魔化しに過ぎない。(ふっと自分の手を見る) 所詮、兵器は兵器なんだ。(とニヤリと笑って、フィンドル教授とシンシアに自分の手を見せる)」

   フィンドル教授に寄り添っていたシンシア、009を見る。
   目を合わせられずにうつむく009。

フィンドル教授「(004を見つめて)君の言う通りかもしれん。……私は、考え違いをしていたようだ。兵器を憎むあまり、自分の手で同じことを……」

シンシア「(フィンドル教授を見て)パパ……」

 

○全景
 

   飛び立とうとする輸送機の背後で、
   オーロラの下、いまだに爆煙をあげ続ける南極基地。

 

 

のような話にでもしてくれれば、そこはかとなくメッセージ性もありそうな気がするし、少なくとも「オレ的ツボ」にはそれなりに引っ掛かったんだけど。

 今回「騙されていた」のはフィンドル教授だったわけだが、教授の最大の間違いは、ブラックゴーストに騙されたことではない。兵器を封じるために新たな兵器を作るという発想そのものが問題なのだ。このような考え方をする限り、ブラックゴーストでなくとも、いずれどこかの組織あるいは国家に利用されることになる。
 この点は原作でも押さえてはいないが、「原作の大胆なアレンジ」とか言う前に、キッチリと押さえておくべきだし、それだけの意義はあったと思う。
 

 蛇足。
 文字どおりの蛇足であり、こんなことを書くのは読者の方に対しても失礼な気がして、非常に心苦しいのだが、私個人の気持ちとしては、どうしても書いておきたい。どうか、お怒りにならないでほしいのだが、今回は蛇足はありません。

(2001/12/20)




戻る