Xの悲劇

 昔むかし。
 世界は混沌としていて、CDだのDVDだのは影も形もなく、ビデオデッキも普及していないが、モノクロ版『サイボーグ009』の放送からは長の年月を経ているある日のこと。
 父親が突然、「サイボーグ009のカセットテープを買ってやる」と言い出して、私は、何故、マンガなどに関心のない我が父が、009のカセットなどと仰せられたものか、そもそも009のカセットテープなどというものがこの世に存在するや否や、これは面妖、と訝しんだのであるが、父の供をして三里ばかり離れたレコード店に行くと、そこには確かに009のカセットテープが売っていたのであった。摩訶不思議なことなりにけり。

 で、このとき買ってもらったカセットテープ(家にはレコードプレイヤーがなかったもので)が、旧ゼロのオープニング(劇場版のロングバージョン)、エンディングと、第2話「Xの挑戦」と最終話「平和の戦士は死なず」のドラマが収録されたものであった。おそらく、懐かしの名作アニメ的な企画として発売されて、父親の見ていた雑誌に広告でも載っていたのだろう。
 ともかく、これが私の旧ゼロとの“出会い”であった。

 さて、テープに収録されていた第2話「Xの挑戦」は、オメガ博士の作ったサイボーグ・Xが009に決闘を挑むという、旧ゼロの中でも評価の高いエピソード。
 この中に以下のようなやり取りがあった。

ミッチイ(ナックの恋人)「ナック……、どうしてそこから出てきてくれないの? ねえ、ナック、本当にあなたなの?」

X(ナック)「僕だとも、ミッチイ。――上半身だけはね」

 間。

ミッチイ「アアーッ!(驚愕)」

 不穏な音楽。

ミッチイ「ナック……。 ううううう(泣く)」

(※カセットテープ版。テープではいくつかのシーンがカットされ、ナレーションが追加されているほか、BGMや効果音の有無など、細かく手を加えている模様)
 他にも、
オメガ博士「ふん、くだらん。これがギルモアのサイボーグか。お前とは比べ物にならん」

X「しかし、少なくとも僕よりは美しい」
なんて場面もあって、どうやら、サイボーグ・X(の下半身)は、かなり醜いというか、悲惨な姿をしているように思われるのだが、残念ながらカセットテープには音声しか記録されていない。
 かろうじて、付属の歌詞カード(?)に場面写真がいくつか載っていて、

こんなの
Xの上半身

Xの上半身は判明したのだが、下半身がどうなっているかは不明のまま。
 私は、このテープを聴くたびに、まだ見ぬXの下半身を  妄想  想像していたのであった。


サイボーグ・X(想像図)
Xの想像図


 その後、LDが出たりCSかなんかで放送したりもしていたようだが、貧乏人の私には見るすべとてなく(注:余計なお世話です)、まだ見ぬXの下半身を悶々と  妄想  想像しつつ30年近い歳月が過ぎた。

 そして今、ついに念願のXの下半身が私の目の前に!(って、わしゃ変質者か……)


で、これが実際のX。

本当のサイボーグ・X

思ってたよりは、どーってことのない姿。
マンガだし、このくらいは全然……。

……?






コンセント

コンセント?




レバー

レバー???



 醜いというより、かなり恥ずかしいかも……。

 まあ、まじめに解釈すれば、コンセントは、コンセントというよりも、(『攻殻機動隊』の草薙素子の首の後ろについてるような)データリンク用のコネクタと見なすべきなんだろうけど、……どう見てもコンセント。
 レバーは、……レバー以外の何者でもないか。

 そりゃあ、ミッチイも泣くよなあ。(涙)

(2006/2/9)


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