あーおれデビルマン見ちゃったよー



 『デビルマン』は、永井豪原作の『魔王ダンテ』をベースに子供に受け入れられるヒーローもののTVアニメとして企画され、'72年7月から翌3月まで放送された。
 永井豪による原作、というかマンガ版『デビルマン』は、アニメの放送に合わせて少年マガジンに連載された。いわゆるタイアップだが、当時の少年マガジンは読者層が比較的高く、“アニメのマンガ化”に対して難色を示し、永井自身が「アニメと同じようなことはやらない」と編集部を説得して連載にこぎ着けたらしい。マンガ版はその言葉通り、連載当初こそ比較的アニメを意識したフォーマットで進むが、中盤以降、もはや壮絶としか言いようのない凄まじい展開を見せる。(ちなみに、この間、永井豪は他に抱えていた連載を全て終わらせて『デビルマン』に専念。そのぐらい、『デビルマン』執筆は永井自身の心身を消耗させるものだった、という話をどっかで読んだことがある。ちょっとうろ覚えだけど)
 連載は、アニメに合わせて打ち切りに近い形で終了。結果的に、デーモン対デビルマン軍団の決戦などが大幅に端折られてしまったらしいが、怒濤の展開と壮大なスケールでもってマンガ史に残る傑作となった。

 で、今回の映画。永井豪のマンガ版の方の“完全”映画化である。
 疑問なのは、コミック五巻分の原作を二時間でまとめるのはかなり無理があるわけで、なんで二部作なり三部作を想定して作らなかったのかという点である。普通にデビルマン誕生から間に一つ二つ軽めのエピソードを挟んでシレーヌで締めれば、一本の独立した映画としても見れるものになるはずだし、設定なり人物なりをじっくり描くことができる。
 特撮/CGにしても、製作費十億だの言ったところでハリウッドなら低予算映画レベル、ごちゃごちゃといろんな場面を出してリソースを分散させるよりも、ここぞという場面に金と時間を集中してクオリティの高いものを作ることを目指すべきだろう。作った人たちは「日本映画の割には頑張ってるね」と言われれば満足かもしれないが、今どきそんなのは通用しないと思う。
 一作目がずっこけるとパート2以降の製作が困難になるという点はあるが、一作で完結しようと三部作にしようと(こけた場合の)金銭的リスクにたいした違いはないし、うまいことヒットすれば二倍三倍に商売できるわけで、単純に金儲け的見地から考えても、二部作ないし三部作を目指すべき、だったと思うんだけどなあ。

 とにかく肝心の映画。
 ネットで酷評の嵐が吹き荒れてたから、覚悟はしてたんで、無事、デーモン化することなく見て来たんだけど……。
 うーん、なんだろこれ?
 とにかくひたすら退屈。見てるうちになんかもう本当にどーでもよくなってくるぐらい退屈。
 レビューしてるサイトで突っ込み所を紹介してるのとか読むと、バカ映画として見れば楽しめるんじゃないかと思えてくるけど(私は思いました)、突っ込み所が笑えるとかじゃ全然なくて、そういう場面がいくらかは刺激になるので最後まで取りあえず寝なくて済む、という感じ。(刺激が全くない状態(感覚遮断)におかれると、正常な人間でも幻覚を見たり幻聴が聞こえたりするらしいが、さすがにそこまでの領域には到達していない。多分)

 それにしても、不思議なほどつまらない。
 つまらないんだけど、そのつまらなさまでなんか中途半端というか。
 お話そのものが本気で起伏も何もないんなら「つまんねー」の一言で済むんだけど、困ったことに、ハラハラドキドキしたり衝撃的だったりちょいと感動したりとかできる(はずの)ポイントがそれなりには存在しているのである。だから、主演が棒読みだろうが場面のつながりがおかしかろうが脚本が目茶苦茶だろうが、もうちょっと見れるものになっててもいいと思うんだよなあ。名作傑作には遠く及ばないにしてもさ。
 そうなってないのは、感動できたりする(はずの)場面が点としてしか描かれてないってのもあるけど、なんか、そういう場面に限って(限らないけど)「ほわ〜ん」と脱力するようなことをやっているからで、ワザと?とか思っちゃうんだけど、作った人たちの嫌がらせなのでしょうか?
 例えば、宇崎竜童・阿木耀子夫妻の最期、非常に緊迫感のある(はずの)場面では、笑わせたいのか泣かせたいのかよくわからない、どうしていいのかわからなくなるようなセリフをかましてくれる。見てるこっちは笑うに笑えず泣くに泣けず、この場面の演出意図をはかりかねて頭を抱えるしかない。いや、これが例えば、“ちょっとトボケたこと言うお母さん”みたいなキャラを確立させた上でのセリフなら、もしかするとアリかな、という気もしなくはないのだが、そういう伏線以前の積み重ねが欠落している。この程度ならまだマシな方で、この映画、こういう演出意図の判然としない場面が延々と続くのである。
 “売り”であるはずのCG場面では、肝心の格闘シーンが動きがへなちょこな上にあっけない。だらだらと長ければいいってもんでもないが、この映画の場合、短いのにだらだらしている。ラストの人柱は個人的にはエグくて好きだけど、ストーリー上の必然性なし。そんなん作ってる暇あったら他にやること一杯あるだろうに。
 主演の子たちも、なんかそれなりに演技しようとはしてる(ような気はする)んだけど、他は棒読みでも我慢するからここぐらい腹から声出してくれ、みたいな場面に限って(いや、限らないけど)気の抜けた声とか出しやがるし。
 とにかく、やることなすこと意図不明で、面白くしようとしてやったことがことごとく裏目に出て結果的につまらない映画になってしまったのか、面白くなりそうな要素を徹底的に潰していった果てに何か新しいものが生まれると思ったけどやっぱりただのつまらない映画にしかならなかったということなのか、最初からつまらない映画を目指して意図通りつまらない映画になったのか、面白いとかつまらないとかどうでもよくて(ギャラもらって)完成させればそれでいい映画だったのか……。

 そんなこんなで、何だかこの映画、つまらないのを通り越して観客に対する悪意のようなものさえ感じてしまうのである。
 この監督さん、ひょっとして悪魔に魂売り渡してるんじゃ……。



(註)この映画、「映画にすらなっていない」という評もあり、私自身もある意味その通りだと思うのですが、他に適切な表現が思いつかなかったため、そのまま“映画”と表記しています。ご了承ください。

 本気でつまらないです。軽挙妄動は慎みましょう。


(2004/10/30)

『デビルマン』公式サイト


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