金網の中の青春 12

いろんな人が「全プロは美味しい美味しい」って言うから、はじめて全プロに行ってみたわけだが、…………私としては、高松ででもやらない限り、「全プロは、もーいい」という結論に達した。これなら地区プロのほうがいいや。全プロというものがイケナイのか、それとも弥彦開催ってのがいけなかったのか、とにかく弥彦全プロ、…………疲れた。

あ、まず最初にお断り。今回は三宅伸選手とのふれ合いとかはなーんにもありませんでしたので、三宅伸ファンは(いるのだろうか……)読まなくてもいいような内容です。でも、燕三条に泊まっていた名古屋嬢からの情報によると

「全プロ記念の夜、三宅伸選手夜の十一時半までパチンコ」

というのがあり、玉野嬢からの別情報によると

「伸さんはパチンコしてない」

というのがあり、どっちが真実なのかよくわかりません。ま、どっちでもいいようなことですがファンは気になる(だからいるのか、そんなファンが)。

あと、全プロのケイリン競技における三宅伸選手のユニフォームというか、ウエアですか、あれがなんかスゴかったということをご報告しておきます。この全プロは朝練見放題で、とにかく見たこともないほど大量の選手がバンクをくるくる回っていて壮観だったのですが、その中でひときわ目立つ三宅伸選手のスタイリッシュなウエア。上はグレーと赤と白のスキッとしたデザイン、ボトムはクアーズライトのロゴ入りレーパン。なんてカッコええんじゃ!と叫びそうになるほどのキマリぶりでしたが、なぜかケイリン競技に出てきた伸ちゃんは、

色褪せた浴衣みたいな色柄のウエア

を着用して、ものすごく体が膨張して見えるのである。「あれはいったい……」

うまく描けないけど、こんなん↑

ケイリン競技の二日目は、準決だし、もっといいの着て出てくれるかな〜と期待してたらまた色あせ浴衣ウエアでした。新調したメガネで目をこらして見てみると、白地に薄いブルーで写真をプリントしたような、けっこうオシャレな模様のウエアなんですけど、いかんせん伸ちゃんが着ると異様に体が膨張して見える。そこに赤や緑のヘルメットかぶるから、なんか……なんともいえぬ愛嬌あふれる伸ちゃんでよかったです(無理多し)。

そのケイリン競技の準決では、なぜか伸ちゃん先行一車みたいな感じになって、伸ちゃんのうしろを小橋と児玉が競るというなんとも信じがたい(そんなこと言っちゃいかんか……)光景を見られてよかったです。場内の実況(とは言わんか)のおじさんも。

「注目の三宅伸」「三宅伸に注目」

ばっか言ってたし。三宅伸ファンなのか?ってぐらい場内放送ではフューチャーされてました。でも7着でした。児玉は失格(←別に必要ないが、書いておきたかったので書いた)。

  

さて、今回の遠征については、ほんとにたいした話はないんですわ。

泊まった宿が、弥彦神社の入り口にいちばん近い清水屋という旅館。これは『全国宿泊表』で、とにかく弥彦でいちばん安そうな宿、っていうんで予約したとこなので、グレードは推して知るべし。3階建ての中堅旅館てとこだ。汚くはなかったですけど、部屋なんか小さめだったし。

まず競輪場に行く前に荷物を置くために清水屋に行くと、入り口に燦然と輝く看板。

『全日本プロ選手権選手一同様』

ををっ! 選手と同宿か?

なんでも、全プロは選手の数が多いんで宿舎には泊まりきれないから、毎年、西日本、東日本、どっちかが外のホテルか旅館に泊まることになっているという。で、今年は西日本の選手が宿舎だという情報を得ていた(蛇の道はヘビですな)。ということは東日本のどこかの地区の選手宿舎か?

部屋に案内されると、同じフロアに大広間(でもないか。小広間だな、ありゃ)があって、「選手ご一同お食事処」になっている。そこをのぞきにいって(いや、まだ選手は誰も到着してなかったんでね)、そしてふりかえったら、

 こんなものが……↓

ちゅちゅちゅ、中部か……

選手数の問題だかなんだか、今回中部は東日本扱いとなって、外の宿に泊まっていたようです。なお、3年前の弥彦全プロの時は、ここは九州の宿舎だったそうです。そうですか、吉岡稔真とか、泊まってたわけですか。同じ風呂……には入ってないな。あっちは男湯だし。

西日本選手ファンとしては、南関とか関東とかの選手と一緒になるよりは、中部の選手と一緒になるほうがマシだが、しかし、それ以前の問題として、「中国の選手じゃなかったら同じ宿になんか泊まりたくない」というのがある。やじゃないですか、風呂上がったら選手とハチ合わせしたりするのは。私は「選手なら誰でもいい」とは思えないタチですので。しかし三宅伸と同じ旅館に泊まることになったら、これもまた困りそうだが。

そんなわけで、中部と同宿と知った瞬間、「げっ」と思った私です。しかし「げっ」と思ってばかりいたんでは弥彦まで来た甲斐がない。観察観察。

中部といえば山田裕仁だ。

山田には、岸和田ダービーの花束嬢の時に煮え湯を飲まされてるので恨みがあるが(執念深いね私も)、それとは別に、競輪探偵で、常に死体で登場する山陀裕仁を書いてるうちにへんな愛着が出てきており、そうなるというとあの顔も味わい深く、それとなく注目しているといろいろ楽しいし、私にとっては、今のところ、吉岡稔真の次ぐらいに観察しがいのある競輪選手です。

で、今回の弥彦全プロの思い出のほとんどは山田裕仁に席巻されました。これが、私が「観察しがいのあるのは小嶋敬二だ。注目注目」と思っていたとしても、思い出は山田一色になったと思われる。なぜって、山田、印象的だったんだもん。

選手の皆さんがチェックインしてくる。若松、富永、島野、小嶋、渡会、鰐淵、あとヤマコウもおったな。しかし誰よりも印象的だったのは山田だ!

どう印象的だったか。小嶋敬二とは、階段降りたら目の前のエレベーター開いて出てきた、とか風呂を出たらそこに立ってた、とか何度か接近遭遇があって、小嶋は顔もガタイもあんなんだし、なにしろ小嶋敬二であるのだからこちらとしてはついビックリはするものの、相手の対応がオトナなのでそれほどの印象を残さないのである。つまり、単に同じ旅館に泊まっている客同士、という感じでごくふつうにスレちがう。肩でも触れば「あ、すいません」て感じ。態度も視線も自然だから気にならないのだ。

しかし山田裕仁。スレちがうたびに「チロリ」と上目遣いや見下ろすような目で見るその目つきはなんなのだ。

そりゃー私はへんな女だよ。二泊三日、黄色いシャツ着たきりスズメで、明らかに全プロ目当てに来てるのに、選手見たって石のように目を合わさないようにしているへんな女だけどさ。

小嶋のオトナぶりを見習ってほしい。あのヤマコウですらもっと普通にしとったぞ。って人聞き悪い言いぐさか、ヤマコウごめん。いやね、ヤマコウって、そういう、女と見れば「美人だろうがブスだろうがいちおう横目で確認しておく」ってイメージあるじゃないですか(ないですか)。でもそのイメージを体現していたのは山田のほうでした。また上目や下目がよく似合う目なんだよ、山田の目。

鰐淵正利も「見る男」だったが、飛んだような丸い目で、もっと正面から「なんだ? ファンか? 誰のファンだ?」って感じで見る。何度か目もばっちり合ったので、石のような女である私が何か言わざるを得なくなり、旅館の玄関で、「お、お、お疲れさまでした」「んどうも〜」ってな会話がなされたりした。じっと見られるのもカンベンしてほしいが、上目&下目チロリの山田よりはぜんぜんいいと思う。鰐淵の株少々アップ。

 

で、選手の行状である。

全プロの夜、選手は無礼講だ、という都市伝説がある。そらもう、めちゃくちゃやるらしい、と。ウソかホントか知らんがな。

そういう知識があったので、旅館の食事なんか食わんで外に繰り出す、んじゃないかと思ってたんだけど、みんな律儀に小広間で夕飯食べてたよ。

「おねえさ〜ん、湯葉巻追加ね〜」

という声が聞こえてた。湯葉巻。そんなにうまいものだろうか。私らの夕食にもイカのすり身の湯葉揚げとか出たけど、それほどうまくもなかったが。私らの部屋は最下級ランクの部屋だから、湯葉のランクも違うのか?

その後、富永がフロントに「タクシーお願い。小型でいいから」っつって渡会だったかと出ていったのと、山田(また山田かい! いやほんとによう見かけたのよ)がサンダルばきで出てったのと、そんなんしか見かけなかった(出ていく山田の後ろ姿を見送っていたら、きっちり振り返ってチロッと見てた。律儀にもほどがある)。そもそも、弥彦って街が、ほんとに何にもないんだ。夜の町を歩いてみたが、入る気のしないスナックと、居酒屋数軒に寿司屋が何軒か。温泉につきもののストリップとか、チョンの間とか、そんなもんはまったくない。弥彦で無礼講は物理的に無理だろう。

それが証拠に、翌朝、山田が大声で、

「おれ、全プロでこんなに健全に過ごしたの初めてや」

って言ってた。サンダルはいてどこ行ったんでしょう。それでむなしく帰ってきたのでしょうか。

朝、というのがどういう状況かというと、選手と同宿とわかった瞬間にイヤな予感がしたその予感がバッチリ当たった。つまり食堂でみんな一緒に朝ご飯、である。むろん同じテーブル囲むわけじゃないし、選手が7時頃だっていうからこっちは選手がハケたであろう8時すぎに朝食に降りてってんだけど、二日ともきっちり山田が残ってるんだ。また山田かよ!

おぼえてる発言を書いておきます。何しろ山田のことですので、ほとんど忘れちゃってるんですが。

「三千円で女呼ぶっていってたから待ってたけど来んかったぞ」

どうも話の流れからいくと、何かを目指してどっかに行くことは行ったらしい。なんか焼き肉屋がどうとかこうとかも言ってたし。それでしょぼい店でしょぼい目にあったのであろうか。それとも別の時の話かな? それにしても三千円というのが、リアルなビンボー臭さだ。

あと、パチンコの話かと思ったら、「機械同士つないで対戦したらどう」とか「馬がどう」とか「カイバがどう」とか「内枠がどう」とか言っていたから、ゲームの話だったのか? ダビスタか? 山田の口からあんなに「カイバ」という単語を繰り返し聞かされると、なんか不思議な気分だった。山田さん、安藤勝己と友達なんだったら笠松で馬主になってあげてください。もし、もう笠松に持ってるんだったら岸和田の花束の件も水に流します(って、流そうが流すまいが、山田は痛くも痒くもねえか)。もし「馬でもほしいよな〜、中央の共同馬主にでもなるか、社台かなんか」と思ってらっしゃるんでしたら、中央なんてつまらんですから、ぜひ笠松の馬主に! 社台のいいやつ一口で、笠松なら一頭買えます。山田さんのような資力のある馬主さんが、笠松には必要なのです。地方競馬の末端関係者としてお願いします(こういう話になったらいきなりさんづけか)。

ま、主にそういうどうでもいい発言で、こっちもそっちを見ないように味噌汁飲んだり(この旅館の味噌汁、やけに薄かったなあ)おしんこかじったりしてたんだが、突然、聞き捨てならない発言が耳に飛び込んできた。なんか盗み聞きしてるみたいだけど、山田ってほら、声がいいからさ、よう聞こえるんですよ。それに山田、明らかに、「聞かせる」しゃべり方だったんだ。

「あいつらも、いつでもどっこでも来てるけど、仕事とか何やってんだ?」

「…………」ソレは私らのことか。と一瞬思った。確かにいつでもどこでも競輪場にいたりするわけだからな、私らは。あんたら何して食ってんだ、と競輪オヤジに訊かれたこともあるぞ。確かに謎かもしれない。

しかし山田に聞こえよがしにそんなことを言われたら。

「ケンカ売っとるんか!」思わずハシを握りしめた私らであったが、

山田はそのあと、「あの茶パツにガングロの連中な」
と言ったので、それは私らのことじゃなくてなんか別の話だ、ということがわかった。しかしガングロって……今どき言うんでしょうか。言うか。でも何の話だったんでしょうか。おっかけファンの話か? 茶パツはいるけどガングロなんているか? ま、私らのことじゃなければどうでもいいです。ちがうよね?

と、このように、じつになんとも実りのない弥彦全プロ遠征だったわけです。というか今回は「山田裕仁の全プロ」でした。最終日の『ケイリン優勝者当てクイズ』でも迷わず山田と予想し、見事的中させました、が、プレゼントにはハズレました。

   

●胴体 ●目 ●耳 ●口 ●手 ●太腿 ●骨