金網の中の青春 08

前回の「吉岡グランプリのあと徒歩帰り」は反響が大きかったです。

「吉岡さんが歩いて帰るなんて!」

「吉岡さんとしゃべったんですか、うらやましいです!」

というメールがいっぱい来ました。やっぱり吉岡の話題だと読者の方の食いつきがいいということなんでしょうか。ってことは、今回は三宅伸の話題だけですんで、まーったく反響はないのでしょうか(泪)。あ、星島太の話題もちょっと出てくるか。以前「なぜか星島太ギャルファン多しの謎」というのを書いた覚えがありますが、最近はどーなんでしょうか。

立川記念後節出待ち&その後の話です。

ひさしぶりの決勝……でもないか。いわき平以来だからけっこうここんとこ優出してるな。とにかく現在の私のホームバンクである立川で伸ちゃん決勝に乗ってくれたし(結果は……いや何も言うまい)、ここは出待ちだ!となるのは当然の流れ。立川の出口はこないだのグランプリの時で慣れてるぞ! グランプリであの程度なんだから、たかが記念、たいして人はいないはずだ。……と思ったらグランプリの時の倍ぐらい人がおる。警備員も三倍ぐらいいる。なぜ。

前節はメンバーが寒かったせいか(失礼)警備員も気が抜けてたらしく出口は全開、まあファンもたいしておらんかったようですが、後節は大量のファン&無用に多い警備員。人が多ければ出待ちもしやすいかと思うとそんなこともなく、待ってる間というのは「何やってんだ私……」感につきまとわれることになる。出口前の駐車場のフェンスに腰掛けたらフェンスがズレてずっこけるというコントみたいなことやったりしてるとさらに「まったく何やってんだ私……」感が嵐のように襲ってくる。

そんな気分をふっきるために私はのべつまくなしに独り言を言ってたという記憶(「何やってんだろーねわたしゃ」「なら帰りゃいーのにね」「でも待っちゃうわたしゃバカだね」などをエンドレスで繰り返す)があり、ハタから見たらさぞや気持ち悪かったでしょうなあ。毅然と待てない私は小者だ。小嶋敬二の写真を下敷きに入れて胸にかき抱いて待っていたお母さんなんか、毅然としてたなー。

なんか、なかなか誰も出てこないもんで、一緒にいた綾瀬嬢が「駅で待つ」と言ってその場を去った。

私も綾瀬嬢に従って駅に向かうか、それともここに残るか。

思案のしどころであったが、私の頭には「吉岡徒歩帰り」がしみついていて、三宅伸も徒歩帰りするんじゃないかという気持ちが捨てきれず、もし徒歩帰りしたらそれほど人気のない三宅伸のことだから(すまん伸ちゃん)駅まで独占かとか思っちゃってさ。そんなセコイ野望を胸に抱く私の前を、三宅伸を乗せたタクシーがブブブーと走り去ったのだったがね。はい、目すら合わなかったです。遠ざかっていくタクシーにむなしくひらひらと手を振る私。

と、ふつうはここで「今回の出待ちは失敗でした」で終わるとこなんだが、やはり粘着質の私のことであるのでそこで終わるわけがなく、タクシーを追ったのである。徒歩で。

でも走ってくタクシーを徒歩で追うぐらい徒労感の強いものはない。いや、走るとスタミナ切れして休むハメになるから、早足の徒歩のほうがいいんです。それにしても、いくら私の歩く速さが速いからっていっても、相手は車だ。もうとっくに見えなくなっちゃった車を追って必死に歩いている私はたぶんすげえ形相だったことでしょう。だって、先発で立川駅に向かってた綾瀬嬢(十分ぐらい前に出てたんだぜ)に道程半ばにして追いついてるんだもん。道が渋滞してるらしい、というのだけを頼みに、歩きに歩く私。

そして立川駅に到着。

駅のキップ売場でもあのデカイ姿は見えず、見つける気もない高谷の真っ黒い顔なんか見つけちゃって気がくじけ(高谷って、なんかやたら見つけるんだ)、しょーがねえや帰ろっと中央線東京方面行きホームに下りたら三宅伸がおった。

ま、こっからは京王閣出待ちと同様の「ずるずると同じ電車に乗り込み、じわじわ接近する」をやっただけなんですけど、なんといいますか、ホームに立ってる三宅伸の背後から近づいて「あのー」と声をかけたところからしてぎょっとさせたようで、声かけるんなら明るく楽しくファンとしてお話でもすりゃよさそうなものを、カチカチに固まってなんら実のある話題も思いつかず、やっとしぼりだしたコトバが「今日岡山帰るんですか」。そしていただいたお答えが「それは言えんな」。わはははは(泣笑)。

京王閣の時も一緒だった星島太はこっちを見ないようにしてるし、あれは明らかに「ブキミな女。目を合わせないほうがいい」と思っている表情であった。でも私もツライんだよ。あんまし三宅伸じろじろ見たらあかんような気がして、つい横の星島のほうを見ちゃうんだよ。星島は京王閣の時と同様のコーディネート(ソフトスーツの下にデザインTシャツ)で、どういうわけかヒゲを生やし(小橋系ヒゲではなく吉岡系ヒゲ)、さらに禁煙パイポをくわえるという「ある種、たまらん」というカッコであったもんで、見とれるということもあったのだが。

で、私と三宅伸は黙って吊り皮につかまってたわけですが、私の体は「いけないいけない」と思いながら約1センチ単位でジワジワと三宅伸方向へにじり寄って行くのである。

これは自分ながら気持ち悪い行動である。顔をそむけつつじりじりにじり寄り、しかしスキを見つけてサッと三宅伸の顔に見とれ、次の瞬間「ハッ」となって横を向く。出待ちよりさらに「なにやってんだ」感の強い行動であるが、何しろご本尊が横にいるもんでそんなこと考えるヒマもない。

にじりよられる三宅伸の気持ちを思うとお気の毒の至りなのですが、電車内の何も知らない乗客も、私の行動には違和感を感じていたようなのだ。

「あのー、ちょっと、もしもし」

私がブラ下がってる吊革の前の座席に座っていた、おばあちゃん、孫娘、お母さんの3人組のお母さんが、私に声をかけるではないか。

「そこの方、何か有名な方なんですか?」

遠慮がちに差し出された手の方向には、三宅伸がぼーんと。

「は、いや、その……」

三宅伸は有名人なのだろうか。その一瞬で私は、三宅伸の最後のモガキぐらい頭を回転させて考えたのだが、結論が出ず、口ごもってしまった。

「あの、もしかして、野球選手の方?」

「あ、それは違います」三宅伸は元野球部員ではあったが。

「いえね、体格が、なんていうか、ふつうの方と違うでしょ。じゃあ何なさってる方?」

なんでそんなに気になるんだ。見ず知らずの、体格のいいだけの男のことが(いや、顔も頭もいいというのが私の立場ですが)。

「えーと、競輪選手の方です」

「まーそーなの。で、お名前は」

「あのー三宅伸さんとおっしゃいます」

ここで三宅伸選手が「レスラーです」と口を出すなどのワタシ的には名場面なんかもあったんだが、お母さんは三宅伸への興味は名前を聞いた時点で失せてしまったようで、次にまじまじと私の顔を見て、

「で、あなたはその方のファンなわけね。わかったわ」 「……………………」

いや、そりゃファンなんですけど。でもなぜそんな確認を。

「はあ、まあ、そんなことをやっとります」かなんか言う私を見てニッコリうなづいて了解してたお母さん、あなたは何が言いたかったの? よっぽど私の行動が不審だったと? へんな女がじりじりと大男ににじり寄ってるのがそんなにブキミだったと? で、そんなブキミな女ににじり寄られてる大男はいったい何者?と思ったと? 

いえ、体格のいい、ハンサムな男に、人間として素直に興味を抱いた……のだ……と思いたい。

そんなこんなで、私は中央線を新宿まで三宅伸選手ご一行とご一緒させていただいて、バイバイしたわけです。ほんとだったら国分寺でおりるか西国分寺でおりるかすりゃよかったんだが、一瞬のうちに、無理矢理新宿に用事をつくった。立川から新宿まではけっこうあって三宅伸を堪能しましたが、でも結局カチカチでなんちゃ話らしい話もできませんでした。

吉祥寺あたりで席がドッと空いたから、まず三宅伸が座り、次に星島がふっとその横の空席(一人分)を見た後、「そこはどうぞ」と譲ってくれて離れた席に座った。そのおかげで私は三宅伸と並んで座ることができました(並んで座ったって別に新たな展開があるわけじゃないが。それでも)。

思うにあれは、星島としては、自分がそこに座ってしまうと、このジリジリ女が眼前をさえぎるように吊革にブラ下がるのは間違いなく、それはイヤだ、ということだったのであろう。いや、気持ちはよくわかります。私だってソレはイヤだよ。ちょっと離れた席で星島太は、気の抜けたような、疲れたような顔でぼんやり宙を眺めてました。席ゆずってくれてどうもありがとう、星島さん。

●胴体 ●目 ●耳 ●口 ●手 ●太腿 ●骨