金網の中の青春 03

私が仕事も家事もほっぽってこんなHPやってるのも『決戦長良川・岐阜オールスター』の花束嬢公募にダメモトで応募したら当選しちゃって、それでナマ三宅伸を超至近距離で見てからだ、ということは『別冊宝島・競輪打鐘読本』に詳しく書いたのでよかったら本屋で立ち読みでもしてみてください。

以来、私は「花束のプロ」を自称してるのであるが、実のところはプロでもなんでもないです。今までやった花束嬢は計6回。多いとお思いでしょうか皆さん。でも私の盟友Y嬢はもう13回やってる。不吉な数字である。だから早く14回目をやりたい、と競輪祭の花束にもすでに応募を済ませている。十回以上花束をやってる人は「永世花束嬢」として、今後抽選などナシで当選させてあげ、希望の選手に必ず渡せるように便宜を図り、長くその栄誉をたたえるべきだと私は思うが、ま、そういうわけにもいかんのだろう。

私は平成8年高松記念に於いて花束5回を数えたところで「花束嬢引退宣言」を行い(誰も聞いてない)、そのあと口をぬぐって観音寺ふるダビの花束をやり、こんどの競輪祭の花束にも応募のハガキを出してしまった。麻薬じゃないが、習慣性があってそうやすやすとやめられるものではないようだ、花束嬢は。

何がそんなにイイのか。というとたいしてよくもない。もらうオミヤゲもたいしたことないし(でもY嬢の付き添いでついてった豊橋のふるダビ花束のオミヤゲはすんげえ立派なスタジャンで、あれは欲しかった。一着2万円?だかするって、競輪場の人が言っていた)、スタンバってる時に選手と話せる、なんてのもめったにない(でもこないだの甲子園ASのオリオン賞の花束の人たちは、検車場で選手にさわり放題だったらしい。「三宅さーんファンなんですー」というギャルもおったそうだ)。それどころか、花渡した選手にキタナイものでも見るような目で見られたりすると「どよーん……」とした気分にもなろうというものだ。ま、そりゃ、選手の皆さんだって、競走を前にしてナーバスにもなってるだろうし、それに渡すのが私だし、あんまり責めるのも酷だと思うが、それにしても……という態度に出る選手はいる。

前の天皇と同じ名前を持つある先行選手に花を渡した時のことだ。その天皇と同じ名前を持つ選手はそもそも私を見ようともしないし、すでにして口がひんまがっているのである。「この人の口は前からひんまがっていただろうか」と考えてみたが、ここまではひんまがっていなかった。つまり何か気にくわないことがあって口がひんまがっているのだろう。花を渡す時、私は必ず「がんばってください」とはっきり言うようにしている。そうすれば、相手はお愛想でも笑顔で答えてくれるものである。しかしそう言われた天皇と同じ名前を持つ選手は「……ウウ」と、ノドの奥でうなるような声をあげ、あくまでこっちの顔も見ようとせず、花と交換にかぶっていたキャップをくれるんだが、それも他の選手はみんな女の子にかぶせてあげるのに、私にはイヤそうに手渡すだけで、徹頭徹尾不機嫌を貫き通した。で、もらったキャップもどういうわけかじとーっと濡れていて、いくら渡すのが私だからってその態度はねえだろう山田(あ、言っちゃった)、開会式で特選メンバーなんだから別にナーバスになるような状況でもないだろう、もーちょっと愛想のひとつも見せたらどうだと荒れたのだった。

F1のように速いと称されたある先行選手に渡した時もすごかった。この時のF1さんもこっちを見ようとしない。口だけでなく体までねじまがっている。「がんばってください」で花を渡したらバイキンでもついてるもののようにイヤそうに受け取るのである。もちろんキャップも放り投げるように渡され、私は怒るとか呆れるとかいう前に感心したね。その日は特別競輪の決勝の選手紹介だったからナーバスになっていてもまあ許す。それに、その顔のゆがみ方が、天皇と同じ名前の選手とはくらべものにならないぐらいのすごさで、ピカソの絵でも見てるみたいだったですわ。その特別競輪、F1さんが優勝なさいました。さすがである。

これは真の花束のプロY嬢による目撃談であるが、ある西日本のヒゲのマーク選手のエピソードである。ヒゲさんは、自分の前に来た花束嬢を見て、どうもお気に召さなかったようであった。いや、別にそんな女の選り好みをするような人ではないか……もしれないので、何か他に理由があったのかもしれない……が、とにかく花束嬢が目の前に来たら、偶然かもしれないが、表情が変わったそうなのである。

「それがですね、私、あんなんはじめて見ましたけど、眉間に十字架のシワができるんですわ!」


訂正●こっちが正しかったそうです

 

十字架のシワ。いわゆる眉間のシワはタテのシワで、そこにさらに激しいゆがみが加わって横のシワがプラスされ、十字架が完成したと見る。ヒゲ氏は、ふだんからよく「喝!」とばかりにタテじわはつくっておられるが、横ジワまで加わるとは。Y嬢はその十字架のあまりの見事さが忘れられないと語る。私も見たかった。

と、まあ、選手も人間であるし、機嫌の照り降りもあろうし、こんな目に逢うということもある、という覚悟したほうがいい花束嬢なのである。ちなみに、今まで私が渡した相手でとっても感じがよかったのは第3位井上茂徳(ちょっと笑顔がスケベぽかったが)、第2位高木隆弘(見るからに好人物)、第1位三宅伸(とにかくニコニコ。三宅伸に渡した人に追跡調査をしても、みんな「すごくニコニコしていてうれしそうだった」と言ってた。でも渡した相手である三宅伸を知らない人が何人もいたのはヒドイ)。この3人ならぜったいハズレはない。あ、シゲさんは引退したから2人か。神山は愛想いいけどちょっと冷たいという意見もある。ま、いくら顔がピカソみたいにゆがんでも、F1さんに渡したい、というY嬢みたいな人もいるわけですけれど。しかし私もヒゲのマーク選手の眉間の十字架をジカにこの目で見てみたい。でも自分が渡してその十字架を見るのはツライか。
 
 

●胴体 ●目 ●耳 ●口 ●手 ●太腿 ●骨