突撃!隣の刀箪笥



越之前州住兼植

清兵衛 様コメント:



 これは、小生にとっては三口目の本身で、居合の試合・昇段審査等の正規演武用としてもとめたものです。前の二口は、通常の試斬用と抜刀用として所持してはおりますが、殊に抜刀用のものは身巾・重ね共に強く先目方が効き過ぎている嫌いもあり演武には些か辛いので、相応の長さを有し(扱う本身は刃長が揃わないと納刀の際危なく、普段の差料より若干短いというのは特に怖い)、細身で軽く振扱い易さ重視の好い出物を探していたところ、ご縁あって小生の許にきたものです。

 時代は江戸前中期ということで、中心については銘・錆味(目釘孔の錆状態や孔の形状なども含めて)・姿ともに頗る健全で元々素性の良いことは観て取れますが、そこから判断して、刀身は随分痩せていることがはっきりしております。察するにこの本身は、その昔斬結んだ際の毀れを研ぎ治した前が在ったやも知れません。小生としては、これもこの刀が辿ってきた幾代もの時代の流れの中の貴重な経緯としてご苦労様の想いを込めて受け止めております。
 なお本身の様子については、やや湾れ気味の直刃で地は板目(柾目掛かる)、鋩子は小切先で小丸に返る−といったところです。一応、日刀保の昭和四十六年十月の貴重刀剣認定書が付いておりました。

 拵えについては、全体として『濃茶仕立て(赤茶けないよう可能な限り深い色調に抑えた)』の江戸肥後拵風に纏めて、小生の場合、掌がかなり大きいため柄握りは太目とし、柄巻きは左小指の収まりと掛かりを考慮して戴きました。


先  巾:六分(1.83cm)
元  重:二分 (0.62cm)
先  重:一分三厘(0.41cm)
中心長 :七寸四分二厘(22.5cm)
刀身重量:750g
全重量 :1330g
ハバキ :銅地金着せ
金  具:講武所の意匠の銀地三点物
切  羽:金差仕上
目  貫:酸漿図
下  緒:正絹(濃茶・黄銅の昼夜)

:管理人コメント:

 今回は、長年、居合、試斬共に御修行をなさっている清兵衛さんの御刀をご紹介致します。
刀身は「越前兼植」の作で、何代の御作かは限定出来ませんが、兼植と言えば、良業物中上作。乱れも直刃も上手という名工です。御刀の写真を拝見致しますと、肌立ち気味の板目が流れごころの地鉄に直刃を焼き、鋩子は小丸上がり気味に返る上品さです。お姿は全景が有りませんので、伺いました事柄から、反りの浅い先細り気味の体配で、切先が小さめとの事ですので、典型的な寛文体配のようです。美濃系の兼植ですが、山城も大和も焼いたと言う事で、こちらは山城風に焼いた物でしょうか。何れにしましても、品位のある御刀かと思います。

 清兵衛さんは、こちらの御刀を公式演武でお使いになるそうで、若干の疲れが見られるようですが、私などでは勿体なくて遣う事が出来ません。清兵衛さんの居合に対する真摯な御姿勢が現れているのではないでしょうか。拵も細部にわたり、心細やかにお気を配っておいでになり、清兵衛さんの御流派の特徴や、或いはご自身のお好みなどを思い考えながら拝見致しますと、また一層の楽しみが見つかるように思います。

全長 刃渡 反り 鞘を払った重量
三尺五寸九分七厘
(約 109.0cm)
二尺四寸八分五厘
(約 75.3cm)
五分三厘
(約 1.6cm)
約1050g
柄寸 鞘寸 元巾 元重ね
九寸七厘
(約 27.6cm)
二尺六寸八分
(約 81.2cm)
九分九厘
(約 3.01cm)
二分
(約 0.62cm)

刀身

柄巻

鞘塗

本身

濃茶裏皮諸捻巻
(鮫巻は親粒入)

黒に近い濃茶乾漆塗
(角補強付鯉口)

唐草透かし
南蛮鍔




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