| 気管支炎(bronchitis) | | Date Created: Jan 07, 2005, 11:30 AM |
俺は過去20年間くらい、風邪と言う風邪をひいたことがことがない。熱を出して寝込むなんてことは忘れてしまった。風邪をひかないと言うことは、「ナントかと何とかは風邪をひかない」と言うらしいが、俺もその部類に入る。しかし、今日は咽ががらがらして、咳が出だした。
2001年9月10日にハワイのバケーションからマンハッタンに帰ってきた。11日が初めての夏休み明けの初めての仕事の日であった。
いつものとおりに8時半すぎに五番街の自宅を出るとビルディングのセキュリティー・オフィサーのレナードが、
「貿易センターで火事がおこっている。」
五番街に出ると、一つのビルの高い位置にある小さな穴から煙が出ている。五番街には車の通りが全く無く、勤めに行く連中がアヴェニューの中央までせり出して状況を見つめている。異常な光景で、「どうやってあんな高い所の火を消すのだろう?」と単純に思いながらユニオン・スクエアーの地下鉄の駅に向かった。
地下鉄の乗客の顔がみんな沈んで見えた。「気のせいかな?」と思いながらオフィスのある34丁目の5番街に行くといつもなら20人以上のスタッフが既に居るはずなのに、会計のビルしかいない。不思議な感じで肩掛けバッグを下ろすと、俺の携帯がなった。コールアイディーにはテネシーと出ている。レシーバーから懐かしい俺の昔のセクレタリーの声が聞こえた。レイチェルだ。
「長生、あなた大丈夫、貿易センタービルに軽飛行機が突っ込んだのよ。」
「え?」
「ペンタゴンにもホワイトハウスにも同じように飛行機が突っ込んだって。」
「え?」
「今また2機目が貿易センターに飛行機が突っ込んだみたいよ。テロよ!」
直ぐに電話を切り、テレビをつけると映らない。電話も鳴らない。地上電話を取ると完全に無音状態。T3とT1の入ったインターネットも死んでいる。会計士のビルも騒いでいる。
二人で直ぐにオフィスを出てまた五番街に出ると街は騒然として、街中の全員が貿易センターを見ている。時間がそこで止まったように、車の動きも無く、ただ呆然と貿易センターを全ての人間が見つめている。二つ目のビルも一つ目のビルよりも少し低い所からかなりの火がでている。最初のビルの火事はもっと大きくなっており、何マイルも離れた場所からでさえ、その火のすごさが確認できる。
オフィスに戻と、アシスタントの一人のスティーブが来ており、一生懸命に有線テレビから通常アナログのテレビのシグナルに変えている。地上波はエンパイヤーからのCBSしか映らない。完全に貿易センターからの地上波は止まっている。すると携帯で話をしていたスティーブが叫んだ。
「Oh my God! World Trade Center falled down!」
また3人で外に出ると一つのタワーだけを残してその下には巨大な真っ白な煙がちょうど巻き上がりかけたところであった。すさまじい光景を見てしまった。それから後は全てが夢の世界の様にしか覚えていない。真っ白になった人々がアップタウンに行進して行く。俺の家のあるダウンタウンに向かうのは誰も居ない。
ワールド・トレード・センターの建築が開始された時、まだアスベスト(石綿)が断熱材として使用されており、最初のタワーの完成時の半分までがアスベストを使用していたが、その後法律で禁止された。タワーの二つ目はアスベスト・フリーである。
あの日から咽がおかしくなり、慢性扁桃腺になりタバコもその年の11月に止めてしまった。政府はアスベストの危険は無いと主張したが、俺のコンタクトレンズが毎日、2度、3度も目の中で割れた。なかなか壊れた破片は取れない。そんなこともあって眼鏡に変えた。11月まであの匂いが漂っていた。
あと10年ぐらいから肺ガンで亡くなる人が多く出てくるであろう。あれだけの大量なアスベストが肺の中に入ればおしまいだ。
俺の咽が訴えている。
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