紙飛行機

芝生に白い紙が散らばっている。
近くに、錆びて崩れた大きな機械。
横や後ろを探って、赤いボタンを見つけた。
押してみる。
機械に電気が通った。
ぐうっと音がして、あちこち光って、でも、すぐ消えた。
機械はそれきりだ。

僕は芝生に腰を下ろす。
遠くで何かの爆発する音がした。
聞こえたのは、ほんの微かに一度きり。
花火か地雷か、そんなところだろう。
あとはただ、空気がこおこお鳴っている。
白い紙を一枚拾い、僕は立ち上がる。

「紙飛行機を折るんだ。テーブルか何かないかな?」

少し離れた場所に白いテーブルを見つけた。
芝生の上をズリズリと、こちらに向かっている。
同じ白い色をした椅子を一脚連れていて気が利いてる。
僕は白い紙をプラプラさせて、テーブルと椅子の到着を待つ。

「紙飛行機を折るなんて何年ぶりだろう?
「いや、そんなには経ってないよ。君の思い違いさ。せいぜい十年かな
「ほら、あの砂漠に行ったとき、そこで折ったよ。忘れたのかい?
「ああ、あの時君はいなかったのか。実はあそこで紙飛行機を折ったんだ」

テーブルと椅子が着いた。
僕は椅子に腰を下ろし、テーブルに白い紙を置く。

紙を半分に折り、真ん中に折り目をつけ、一旦広げる。
紙の角を、中心の折り目に沿うように、三角に折る。
真ん中の折り目の反対側の角も同じように、三角に折る。
この時点で、紙は家の形をしてる。
それを、最初に半分に折った真ん中の折り目どおりにもう一度折り直す。
斜めの辺を、今折った辺に合わせるように折り、裏返し、反対側も同じに折る。
これが、紙飛行機の両方の羽になる。
あとは、羽になる部分を胴になる部分に対して直角になるくらいに広げ戻す。
完成。

僕は出来上がった紙飛行機を眺める。
片目を閉じて、仕上がり具合を確かめ、あちこち指で挟んで折りを強くする。
羽の角度を調整し、二三度投げるマネをしてみる。

「いいよ。いいのが折れた」

僕は紙飛行機を手に立ち上がる。
空を見て、辺りを見渡す。
誰ひとりいない。
遠くに林は見えるけど、鳥は飛んでいない。

僕は紙飛行機を空に放った。
ほんの一瞬まっすぐ飛んで、紙飛行機は空中で静止した。
動かない空中の紙飛行機。
椅子に座り直した僕は、頬杖をついてそれを眺める。

「悪くないよね?」

風が吹いた。
紙飛行機はバラバラの紙になって、ハラハラと舞い落ちる。
白い紙が芝生で眠る君に降り注ぎ、君は静かに目を覚ます。
青い空に6月の太陽。
体を起こした君の中に微かに残る僕の気配。

©  Annatto Shiquiso



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