オンボロロボット

オンボロロボット。原子力で動く古い仕組み。
草の生えない土地で、たったひとり、草の種を蒔いて働く。
土地に草が生えたら、ヒトが来て、その土地に町を作る。
オンボロロボット。そのために生まれた。

だけどオンボロロボット。原子力の古い仕組みでヒトと一緒にはいられない。
人が来るその前に次の土地へ運ばれる。
自動運転無人トラック。
土地に草が生えても生えなくても、時期が来ればやって来る。
この土地に、草は生えなかった。

オンボロロボット。荷台に乗せられ次の土地へ向かう。
揺れる荷台に仰向けになって、満天の星を眺める。
星座を二つ知っている。
北斗七星と南十字星。柄杓と十字架。
最後に種が草になった土地では南十字星が見えた。
今、揺れる夜空に見えるのは北斗七星。
昔、マザーが教えてくれた。

276バイト。マザーのメモリー。
ヒトは焼き尽くされる森の木のように炎をあげて燃えた。
ヒトの森の全てが炎に包まれてから百度目の夜、北の空で柄杓が傾いた。
柄杓の水は、百度目の朝が来るまでヒトの森の炎に降り注がれた。
そして、炎は去った。
その夜、光る十字架が南の空に蘇った。
だがヒトは、誰もその行方を知らない。

オンボロロボット。胸の蓋を開けて手帳を取り出し、今日まで数百年の成果を振り返る。
柄杓の見える土地で4カ所、十字架の見える土地で1カ所。
今までに5カ所で種が草になった。
最後に種が草になってからずいぶん経つ。
たくさんの種が、土の中で腐り、干からびた。
オンボロロボット。右手を抜き取り、残りの種を数える。
右手の種入れ。透明のケースにわずか二粒。
抜いた右手ごとケースを振ってみた。
二粒の種。二粒分の音。

オンボロロボット。次の土地に降り立ち、そこで虫を見つけた。
虫を見たのは、これが初めて。
虫は土の上を這い回り、這い回る。
オンボロロボット。大石に腰掛け虫を見続けた。
虫は這い回るのをやめ、顔を上げた。
虫の、赤い光る目が言う。

ヒトの滅びるのをオレは見た。
土地に草が生えてもヒトは来ない。
ヒトは滅びたからだ。
この土地はかつてお前が草を生やした土地だ。
だが、お前の草はお前がこの土地を去って間もなく枯れた。
オレのこの目を見ろ。
オレの目は赤い。
この赤はそのシルシなのだ。

オンボロロボット。今、原子炉の火が、消えた。

人の形をしたものが大石に腰を下ろしている。
右手から蔦のような植物が延び、全身を覆っている。
その葉の上を這い回る一匹の小さな虫。
青い目が美しい。

©  Annatto Shiquiso



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