「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
についての小さなノート
【注意】

以下のノートには、この作品のネタバレが含まれます。これからこの作品を読むつもりの方は、以下は読まない方がいいですよ。

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アンドロイド達は、「マーサー教」のマーサーの正体が暴かれたことで、マーサー教が影響力を失うと本気で考えている。マーサー教の"人気"の理由が共感(エンパシー)であって、マーサーという人間そのものではないということに気づけないからだ。マーサー教の"信者"にとって、マーサーの正体が売れない三流俳優だとか、映像が全て作り物だとか、そういうことは二義的なことでしかない。マーサーに感情移入して共感している人間にとって、そんなことはどうでもいいことだということに、アンドロイド達は気付けないし、理解できない。映像は作り物でも、共感(エンパシー)はホンモノである。重要なのは共感であり、そのための手段はどうでもいいのだ。それが理解できずに、マーサーの正体を暴いたことで、ことさらに共感(感情移入)のすばらしさを叫ぶ人間達に一泡吹かせた気になっているアンドロイド達の"間抜けぶり"が、この作品の一つの要点である。共感(感情移入)は、その実体験なしには理解することが不可能なものである。「他者の身になって感じたり考えたりすること」が共感であり感情移入であると、言葉で理解しても、言葉の理解だけでは共感(感情移入)が、人の内面に引き起こすものの実際を理解することは出来ない。アンドロイド達が、マーサーの正体が暴かれたことを重要視すればするほど、それは共感(感情移入)の能力をもたない自分達(アンドロイド)の"限界"を際立たせるだけである。だが、共感(感情移入)の能力を持たないアンドロイド達は、当然、そのことにも気づけない。

(2008.05.07)

©  Annatto Shiquiso

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