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■作品としての評価
この作品の評価は一般に高い。が、実際に観てみると騒がれているほどではないことが分かる。30年以上も前に、あれだけの「宇宙」を描いたと言う点では、確かに評価は出来るが、実はそれこそが、この作品を映画史的にのみ重要な「凡作」にしてしまっている。技術的な「見せびらかし」が優先されて、作品が伝えようとしたはずのテーマが消化不良を起こしているのだ。
実際観てみると、本物のような猿人(原始の人類)や、無重力を表す俳優の動きや、時空の果てへのワープ(?)時の不思議な映像など、この作品の技術的な面はすばらしい。が、それはあくまでもこの作品が公開された30年前の感覚からすれば、である。おそらく公開当時の観客には、鮮烈で摩訶不思議な映像体験だったろう。つまり、当時の観客は、それだけで、この作品にある種の敬意を払っただろう。だから、たとえば、宇宙飛行士が円形の船内の内側をジョギングする様を飽きることなく眺めただろし、宇宙の果てに続くなんだから分からない映像にぼーと見入ったことだろう。だが、21世紀に生きる我々から観れば、そのどれも、明らかに幼稚でぎこちなく、特別新鮮味もない。とくに時空の果てに向かうときの映像は、苦笑ものだ。だから、そういう「みせびらかし」のシーンがどれも、ただ「くどい」だけに感じてしまう。実際、猿人のシーンでも、無重力を表すシーンでも、今の感覚からすれば、無意味なほど長いし、また、どう考えても余計だとしか思えない場面が、ただ「みせびらかす」ためだけにカットされずに残っているように思える。白黒映画しか観たことがなかった者が、カラー映画で青空を見せられれば、もう、ただそれだけで感動してしまうだろうが、カラー映画を見慣れてしまった者は、その青空がよほど美しいか、何かを感じさせるものでなければ、ただ退屈なだけだ。
ともかくこの「みせびらかし」のせいで、上映時間が普通より長いにも関わらず、物語の方はぶつ切りにされて、まるで作品としての一体感がない。実際、別々の映画を4本続けてみたような気さえする。「人類の夜明け」「フロイド博士が月面でモノリスを観る」「ハルの反乱と沈黙」「宇宙の果て」の4本だ。ラストも酷い。最後になって慌てて、なんとかまとめようとしている感じが無様というか、滑稽だ。
原始の人類に知恵を与えた謎の物体「モノリス」や、それが命の誕生の鍵を握るような暗示としての惑星と胎児。これらの着想について言えば中学生でも思いつきそうなほど浅くて分かりやすい。いや、分かりやすいのはいい。ただそこに人を納得させる「深み」を持ち込めなかった、描き出せなかった点が、この作品を「凡作」にしてしまっているのだ。思いつきでそれらしいものを並べることは簡単だ。神、宇宙、命、光、この世の果て、時間、そう言ったものをさも意味ありげに並べて、それらしく取り繕うことは、凡庸な才能にもできる。だが、そこに生まれるのは、街角で手渡される新興宗教のパンフレットの中身のような安直さ、安っぽさでしかない。
見た目ばかりに気を取られて主題を深く掘り下げ、描ききることが出来ていないと言う意味で、この作品は「凡作」なのだ。
■人々を魅了するハル
非凡な才能が生み出す真の芸術とは、たとえば人の横顔ひとつで、観るものに深い何かを与えることが出来るものだ。その意味で、この作品で真に芸術的と言えるのは、ものも言わずただ赤く光るハルの目(センサー)の映像だろう。皮肉なものだ。金をかけ、苦労して撮影した「みせびらかし」映像よりも、静止したままで音すら発しない丸い赤ランプの映像の方が強く長く観客の心をつかんでいるのだ。証拠?この作品をもう一度観れば分かる。そうすれば、あなたが記憶していたよりも、実際のハルの出番はずっと少ないことに気づいて驚くはずだ。そして、無意味な見せびらかし映像の「くどさ」にうんざりもする。
この作品の高い評価の本当の理由は何なのだろうか。
真に迫った宇宙空間?
なるほど、初めてあれだけの映像を生んだと言う意味では評価できるだろう。だが、それだけだ。宇宙空間は今の映画の方がずっと迫真的で、美しく、躍動的だ。
モノリスについて?
あの程度の描き方では、うぶな少年少女を惑わすくらいが関の山だ。あんな上っ面をかすめたようなもので、人の心を本当に感動させることは出来ない。
そう、やはりコンピュータのハルだ。
ハルの言葉使い、沈黙、反乱、そして恐怖と懇願と死(機能停止)に、人はもっとも強い「なにか」を見出し、感じ取る。もったいぶったモノリスの「嘘臭さ」とはまるで違う「本物の何か」を感じる。つまりこの「ハルの物語」こそが、この作品が長らく人々を魅了する本当の理由なのだ。
だが、全体を観れば分かることだが、あくまでもこの作品の主題は、優れた「ハル」ではなく、もったいぶるだけで底の浅い「モノリス」なのだ。この作品が観る者に睡魔と戦う義務を与えるのはこのためだ。この作品は、せっかくの新鮮なハムを、一週間前のパンで挟んでサンドイッチをつくってしまったようなものだ。中のハムは絶品だ。しかしサンドイッチとしては食えたもんじゃない。
2001.08.22
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