自分がかつて存在した場所や、インターネットで送られてくる自分以外の誰かが存在する都市の夜の風景。なんということもない、どこの街にもみられる夜景の、漆黒の闇の中に輝く自然光のそれとは異なる光が写し撮られる。空が夕闇に包まれ始める頃、ひとつ、またひとつと灯り出す窓辺の光。街灯、車のヘッドライト、そしてネオン。それら人工の光を、朝岡は、都市の輪郭をトレースしていくように恣意的に結んでいく。大きさの異なる円形に加工を施されプリントは、壁面の上に星座のように配置されることによって、二次元の世界から再び三次元の世界へと還元する。時間と空間は異化され、<点>と<線>と<面>とで構成される彼女の風景たちは、たちまち新たな記憶を創り出していく。それはまるで、わたしたちの身体というひとつの宇宙を構成する細胞が、分裂し増殖するかのようにも感じられる。そしてそこには、さまざまな可能性や、重層的な意味、無限の時系列が生まれるのだ。
また近年では、インターネットやワークショップを通じて、自分以外の人間が撮影した写真も取り込んで、現実の空間やウェブ上の仮想ギャラリーでの展開も行っている。写真という共通の視覚言語を利用した、予測不能な即興。そこでは、時間や空間の連続性は無視され、ゆっくりとその束縛から解き放たれる。
夜空を仰ぎ見る。そこには太古の昔より規則正しく運行している星たちが連なり、無数の光となってきらめいている。世界中どこにいっても、都市という、わたしたちの目的に沿って構築された環境の中では、同じような生活が日々営まれ繰り返されている。しかしそれにもかかわらず、わたしたちは、それぞれが異なる世界を知覚している。そして、もうひとつの夜空に想いをはせるのだ。
杉田 里佳
インディペンデント・キュレーター、2000
"Dreaming Cities"展カタログより