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夢みる都市 Dreaming Cities

 朝岡あかねは、作品の強度を失うことなく変化に富んだ様々なメディアを使いこなす作家で、ゆっくりと独自の安定したリズムを保ちながら、自身の世界を発展させてきた。作品を満たす密度の高い詩的な存在感は、鑑賞者を包み込み、さまざまな感情を目覚めさせ、文化の違いを超えた新たなリアリティの領域にわたしたちをつれてゆく。

過去の作品では、ミクロコスモスとマクロコスモスのつながり、過去、現在、未来を見えない糸で紡ぐ神秘的なシンクロニティを探ることに主題がおかれていたが、近作は日常性の中に潜む、理性のコントロールから逃れた「永遠」に近づく場所、そんな意識の隙間に関係している。彼女の作品は、それ自身の中で主題が完結しているのではなく、夢をみるという状況ー深い瞑想や、ふと聞こえる雨音や見るともなしに眺めるテレビの画面などをきっかけとしてふいに陥る、意識を放棄した状態ーを導くための装置として機能している。

 今回の個展で発表される一連の写真作品は、都市はどのように夢を見るのか、わたしたちをもうひとつの世界へと旅立たせる一篇の詩はどんなふうに日常生活の中に潜んでいるのかを見せてくれる。白黒写真のシリーズ“City Scapes(都市の風景)”は、都会の潜在的な美しさを明らかにし、“Tokyo Highway Cruise(東京首都高航海)”は、夜の高速道路を走る車を追い越していく街の灯かりや車のライトをフロントガラス越しにアウトフォーカスで捕らえたシリーズである。“Escape(逃亡)”は、雨の夜、町を出て行くシーンを想定した作品だ。最初にビデオ作品として制作され、後からプリントをおこしたこのシリーズは、身体的、精神的、感情的な移行につてだけでなく、動きを捉えるビデオと瞬間をとどめる写真という表現メディアの移動についても考えさせてくれる。

朝岡は時間を氷結させ、日常生活のもっとも身近なところに生息している無意識の宇宙のマグマにわたしたちを沈めようとする。彼女の作品は、時間の経過や喪失のもたらす空白に結びつくある種のメランコリーといえる状況を提示するが、それはけっして哀しさを伴っているわけではない。出口のないノスタルジアにひきこもることはなく、希望と未来への確信に溢れている。これらのイメージは、わたしたちを日常のほんの少し向こう側に導き、遠ざかる意識の状態を誘発し、最も身近なところに潜む無限の距離を意識させる。それゆえ、わたしたちはセンチメンタルな旅のほろ苦さに感染してしまうのだ。

Rosa Martinez ロサ・マルティネス(インディペンデント・キューレイター、2000)

"Dreaming Cities"展カタログより


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